D4 バストマイナス一五センチ
「はあはあはあはあっ……」
ん?
あっあの鈴の音のような声は……。
「羽衣君! お巡りさん見つからなかったから……。ごめんなさい。……羽衣君?」
あー。
心さんが戻って来てくれたよ。
やっ優しいなあ。
あ、そうか。
「羽衣ひなた」がここに居ないんだ。
ぼっ僕は、中の人になっているからな。
「『Dカップ』! やれ、『Dカップ』! はい、『Dカップ』!」
石和のアニキの手下が調子にのっているよ。
こんな事で、手拍子する事か?
よっ酔っぱらっているのかな……。
おっ女の人は、ブラジャーするものじゃないの?
『ワタシは、そう言う囃し立ては、嫌いなのよ。成敗させていただきます!』
ああ、乙女語な僕、何か怒っているよ。
けっ喧嘩は止めようよ。
僕も、バトルしないで。
『はあああああああ……!』
くっ。
ふっ不本意ながら、僕は、気合いを入れて声を発してしまった。
『お返しよ!』
あっ足をグイーンと大きく回して。
『Dカップキック!』
グバキッ。
おっぱい、ぷるん、ぷるん。
「ぐあー。いってー」
ふっ太めの澁谷にアタックだ。
『さらには』
せっ正拳突き。
『Dカップパンチ!』
バシンッ。
再び、おっぱい、ぷるん、ぷるん。
「うおっ。あっ」
干川も参ったかな。
ああ、いやいや、そんな考え方は良くないな。
ぼっ僕は、暴力反対派だ。
カラッカラッ……。
こっ心さんが、こちらに来たよ。
「あのう。どなたかは存じませんが、『Dカップ』さん……。なのですか?」
心さん、そこに突っ込むの?
そっそう言えば、心さんは、あまり胸ないね。
恥ずかしがる事ないよ。
ひっ人それぞれだからさ。
なっ何て言える訳がない。
『ワタシは、Dカップ美少女JKひなぎく。櫻庭心さんね』
足をぴしっと合わせて、びっと敬礼。
僕のその、『Dカップ美少女JK』ってかなり恥ずかしいのですが。
「はあああ。くらくらします。あの、申し上げ難いのですが……。ブラのサイズはおいくつかしら……?」
もじもじと可愛らしく上目をちろりっとして、訊かれちゃった。
かっ可愛らしいなあ、何をしても。
『ワタシのブラジャーは、《D七〇》よ。最強のサイズと自負しているわ』
何を言ってんだよ、僕は。
ブブブ……ブラジャーのサイズなんて、生きて行く上で関係ないだろう。
「私が、《AA六五》だから。トップバストが、七三センチと八八センチ……一五センチもトップが違うの? 一五センチも……! 私は、一五センチもマイナスなのですわ!」
心さんが、小刻みに震えている。
かっ可哀想に……。
かっ可哀想にさせているのは、僕じゃないか。
ごめんなさい。
『Dカップ美少女JKひなぎく。おっぱい仮面とか、呼ばないでね。再び会う事があると思うわ。よろしくね』
僕は、ウインクして、すたっと夜空に高く飛び上がったかと思うと、去って行った。
だって、もっ揉め事が起きそうだったんだもの。
僕は、平和にやって行きたいんだよ。
けどさ、それで良かったのかなあ?
◇◇◇
「や、やあ。心さん……。ぶ、無事だった?」
こっこそっと、心さんの後ろから現れたりして。
「羽衣君、どこに行っていたの? 今ね、『Dカップ』の人が来たのよ」
さっ桜色の唇で、僕に話し掛けているよう。
でも、その『Dカップ』ってストレート過ぎないかな。
はっ恥ずかしいよ。
あ、僕が言い出した事だよね。
しまった。
「その方ね、『Dカップ美少女JKひなぎく』さんらしいわ」
やってしまった。
あっあんな風に僕が女の子になっても、「羽衣ひなた」が変身したって気がつかないよな。
「そっそうなんだね。へっ変な人には気をつけないとね」
よっよそを向いて、頭を掻くしかなかった。
僕の悩み、きっ吃音も痛々しくなって来たぞ。
「そうね。でも助けてくれたみたいなの」
そりゃあ、力ではね。
『Dカップキック』に『Dカップパンチ』だものな。
めっ目には目を歯には歯をで、暴力を働いてしまった。
僕は、弱く細くで良かったのに。
心さん、傷ついたよね。
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