D3 羽衣天性!Dカップどんっ

「おら、そこのボウズ」


 いっ石和のアニキが、一人の太めの方に、顎で行けよと示した。

 ぼっ僕は、威張った奴らは嫌いだな。

 石和の弟も良く似ているよ。

 いっ石和のうちは七人兄弟で、お菓子等に縁がないらしく、がっ学校の工事のおじさんに貰ったミニ缶のオレンジジュースを朝礼台にこぼしても、すすっていたものな。

 このアニキの上の兄は、けっ結構いい大学に入ったらしい。

 げっ、そんな事考えていたら、ふっ太めの方が、こっちに来たよ。


「おらー! 可哀想だがよ、石和さんの命令だしな。ひひっ。澁谷しぶたにさんが相手するな」


 太い足で背中に一撃された。

 そっその後は、もう叩かれっぱなしだ。

 ボコボコ。

 ガシガシ。


「いっ痛たっ。痛いよ! はっ話し合いしましょう」


 だっ段々、僕はしゃがんでしまった。


「難癖つけたろ? ボウズよ。生意気なんだよ。浴衣のおねーちゃんと、いちゃついていろ、ボケがあ!」


 ボウズ、ボウズと……。

 羽衣ひなたって言う、かっ母さんのつけてくれたいい名があるのですが。

 ボコボコ。

 ガシガシ。

 とっ兎に角、頭はガードだ。

 父さんのいつもの八つ当たりで、学んだんだ。


「ぼっ僕は、難癖つけたりしていませんよ。いっ痛いですから」


 くっ……。

 けっ蹴られたら痛いだろ。

 この人達、喧嘩から何も学ばないのかな。


「……痛い。いっ痛い。……痛い」


 この感覚に覚えがあるな……。

 何だろう。

 かっ体が覚えている……。

 もっもう一人の前歯の欠けた方がボコリに肩を揺らして来たよ。

 厄介だな。


「はっはっ。干川ほしかわさんも来てやったぜ」


 ボカッボカッボカッ。

 ボッコーン!

 痛恨の一撃で、ぼっ僕は、綿菓子屋と古着屋の間、夜店裏に飛ばされた。


「へっへっ……。思い知ったろう。ボウズ」


 ◇◇◇


「……」


 ――シュキュイィーン!

 どっどこからともなく、綺麗なピンクの光にくるくると僕は包まれた。

 さあ、左手を挙げて叫ぶんだ。


『羽衣天性! Dカップアップロード』


 ぼっ僕は……。

 僕は体の痛みが、自分の体を変えていくのを感じた。

 むっ胸が、ほわーんと膨らんで来たよ。

 こっこれを奇跡と呼ぶのだろうか。


『はあっ』


 さっ。


『Dカップ美少女JKひなぎく! 見参!』


 高く跳び、空からたたっと降り立った。

 カツーン。

 ローファーが見えた。

 や?

 僕の足じゃないか!


『ふーっ』


 なっ長い髪をきゅっと高くポニーテールに揺らして、しっ白いセーラー服の女になっていた。


『お久し振りだわ……。ワタシ』


 おっ乙女語で、僕は、何を言っているんだ! 

 この人達を煽ってはいけないのに。


「おう、何だ、この女? さっきの浴衣のねーちゃんじゃねえな。セーラー服のJKもいいじゃん」


 ありゃ、いっ石和のアニキが、突っかかって来たよ。


『ワタシを女で片付けないで。女の子だからって、バカにしない事ね』


 右肩を出して腰に手を当て、左手は、直ぐに突きを出せる様にぐっと引いた。

 シャッ。

 ぼっ僕の非力な腕が、不思議と、一つ拳で空を切った。

 たわわな胸がぽいんと揺れた。


「そーだなあ。ぼよんといい胸してんじゃね?」


 いっ石和のアニキ、えっち。


『ふふふ。そうね、《D七〇》のブラは最強ですわ!』


 ぼっぼぼっ僕は、どうしちゃったんだ? 

 そう言えば、母さんは『Dカップ』だったな。

 せっ洗濯物干していて、知っちゃったよ。

 カッカッ。

 両足を肩幅にして、拳を引き、臨戦体勢に入る。

 闘いか……。

 むっ虚しいんじゃないのかな。


「ゲラゲラゲラゲラ」

「ガーッハハ」

「ハハハ」

「『Dカップ』! ほれ、『Dカップ』!」


『囃し立てないで!』


 うわお。僕の乙女語マジ怒り。

 又、暴力かよ。

 ほっ本当、本意じゃないのよ。

 あ、これは、「ひなぎく」の真似。

 ぼっ僕の中には、僕がいる様だ……。

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