それはありふれた人間同士の戦争のはずだった。あるいは、
辺境から仕掛けられる無差別的なテロの鎮圧のはずだったが、
火星近辺の宙域で内惑星軍を突如襲撃したのは奇怪な「機体」、
否、宇宙空間で活動可能な何らかの「生命体」だと明らかになる。
転属先の火星へ向かう最中、その異様な敵襲に見舞われるクルベ。
手持ちのカードはほとんどなく、行き合わせた女性士官とともに、
ギリギリの窮地を切り抜けて、祈るよりほかない漂流を経験する。
10年前、木星宙域の人類社会は、その異様な敵襲により壊滅した。
辛うじて生き延びたマイヤーたちは劣悪な環境で救援を待ち続け、
少女アルミの17歳の誕生日、遂に動き出す。姫君に希望を託して。
アニメでお馴染みの巨大ロボットやその周辺機器が登場し、
飛び交う台詞は海外のSFや軍事もののように洒落ていて、
メカや宇宙の描写と説明は重点が押さえられて読みやすい。
それら要素を背景に描かれる重厚な人間ドラマが素晴らしい。
宇宙の本を読むのは好きで(一般向け科学の本、みたいなの)、
機械いじりにワクワクするタイプで(でも算数できない文系脳)、
骨太な戦史×人間ドラマは大好物で(主戦場は幕末までだが)、
本作には好みのポイントがふんだんに入っていて嬉しくなった。
巨大ロボットものの小説はウェブ上でも数本、目を通してみたが、
説明が逐一煩雑に書き込まれたバトルのテンポに不満を覚えたり、
逆に専門用語の説明もロボットの描写も稀薄で拍子抜けしたり、
好みだと思える作品には出会えていなかった。
やっと見付けた!
宇宙船があり、ロボットがあり、かっちりと細かく原理が説明されるという意味では確実に、非常に硬質な、そして古典的なSFと言っていい作品。
しかし、この小説のもう一つの特徴は、実は作品自体が内包する柔らかさ、繊細さでもある。特に Episode2以降、硬質な技術が、アルミ・ロビンソン(漂流者ロビンソン!)という一人の少女を救うために使われ始めると急速に叙情性によって、柔らかい人間の心の動きと機械でできた硬質な世界が統合されていく。
若い女性リーダーとしてやや肩肘張った感じのマユミも可愛いし、ぶっきらぼうなメールを送ってくるクルベもいい。
SFの持つ硬質な世界と、人間たちの織りなす、「思いがけなくも柔らかい」世界の双方の中で、アルミという少女がどうなるのか。先が待ち遠しい。
本作は、日本のアニメが得意とする『人型ロボット』ジャンルであると同時に、若干マニアックな海外SF的な世界観も併せ持っている。さらにはサバイバル、ラブロマンス、駆け引きなどの人間ドラマまで見せてくれる極めて総合的な物語でもある! 一粒でいくつもの味が楽しめる素晴らしいエンターテインメントだ。
レールガンが主武装のロボ『オービットガンナー・モジュール』のカッコよさはもちろん、登場する各キャラクターの個性、物語の随所に散りばめられた小ネタなど、楽しめるポイントはいくらでもある。
僕はepisode-2がとくに好きだった。恋も知らない女の子を送り出すために大人たちが奮闘すると言う最高の物語で――手に汗握るだけじゃなく、思わず目頭が熱くなること間違いなし! アルミちゃんの可愛さは読んでくれとしか言いようがないっ。
あと宇宙イカの天丼は食べてみたいです。
面白さ抜群のロボ小説をみなさんもどうぞ!!
未知の敵「マニューバクラスト」を相手取る軍人たちのお話。
主人公は『クルベ中尉』だが、彼を取り巻く一人ひとりが個性と思いを持って動いているので群像劇に近い。
あらすじを見ての通りバリバリのSFな本作だが、「普段はガンダムをたしなむ程度」な人でも問題なく読んでいける(読んでいけた)。
本作はビデオゲームに喩えるなら“チュートリアルが丁寧で巧みなアーマードコア”なのだ。
(作中要素はむしろ“地球防衛軍シリーズ”に近いが)
主人公たちが直面する困難、そしてそれに対する解決方法は本格的なSF的考察に基づいて提示される。
それゆえに読者は物語を追いながら必然的にSF的要素を理解していくことにな る。
各話とも一歩間違えれば死ぬより酷い目に遭うシチュエーション満載でハラハラしつつ、
頭の片隅では「こんな難しげな話読めてる俺スゲー」みたいな謎の優越感を刺激されるのだ。
各エピソードごとに「ピンチになった→逆転した!」のカタルシスがあるのも読みやすさの一要素だろう。
レールガン装備の量産型主役ロボットにサイボーグ武装少女、飯テロ描写も添えてキャッチーさのバランスも良い。
SFやロボットになじみのない方にこそ“入門用”にオススメしたい一作。
遥か未来、宇宙に進出した人類。
しかしそこに待っていたのは、宇宙という過酷な環境が生み出した未知の地球外生命体。これはその存在と戦う物語である。
注目すべきなのはロボットを中心としたSF考証、泥臭いロボットバトル……もそうだが、それよりも登場人物達の物語が釘付けになっていく。
まるで洋画を思わせるような垢抜けた感じ。それが新鮮な気持ちを与えると共に、もう一つある事に気が付く。
彼らはこの過酷な宇宙の中、生きようとしている。足掻いて、頑張って、挫けずに。まるで戦中の記録を見ているような錯覚に陥ります。
そして注目すべきは、やはりイカ天丼。見ていると食べたくなりますよ絶対!