第5話
返事はすぐにきた。
『いつもありがとうございます♪
実はあの絵は私も思い入れがあって‥7年付き合った人との別れをなんとか乗り越えようとして書いた絵なんです、だから、もしよかったらあなたの悩みを教えてください。あなたの悩みが何かはわからないんですけど、あの絵を見て共感してくれたってことは、私もなにかわかるところがあるかもしれません。』
そんな風にしてさくらさんとの交流は始まった。その時は正直に孝との関係を打ち明けた。ネット上で知らない人だととても気楽で、なんでも打ち明けられた。
さくらさんははじめは遠慮があったものの、ずっと由美がうだうだと同じようなことで悩みを相談していると、だんだん辛口で返してくれるようになった。
だが、親友のように呆れてもう聞く耳持たず、といった感じではなく、多分自分にも思い当たるところがあったのだろう、苦しそうに、まるで自分自信を叱るかのように厳しい言葉をくれるのだった。
『彼といくら一緒にいても、それは若さを無駄にするだけだよ』
『正直いって、大学で彼氏いなかったってのはやばいよ。だから今のうちに手ぇひいときな』
『結局片思いなんだって』
でも、でも。
由美はさくらさんから返信が来るたびいいかえしたくなる。ご飯に誘って来るのはいっつも向こうだよ、だから私のこと向こうも好きなんだよ。
でも、由美もわかっている。
孝は極度の寂しがりやで、1人でご飯が食べられないこと。
彼の大親友は国家試験を受けるため、忙しくなかなか孝に付き合ってばかりいられないこと。
由美は誘えば断らないから、つまり〝都合のいいオンナ”だということ。
だから、全て打ち明けているさくらさんには反論ができない。
反論したって、由美だってわかっているこんな答えが返って来るのだ。
それにーーさくらさんはただ怒っているだけじゃない。自分も苦しそうなのだ。
『彼といくら一緒にいても、それは若さを無駄にするだけだよ、わかってたのに私はどうして7年も一緒に過ごしてしまったの。』
『正直いって、大学で彼氏いなかったってのはやばいよ。だから今のうちに手ぇひいときな、でも彼氏が欲しいだけで7年も自分を大切にしてくれない相手にすがってしまった私は一体なんなんだろうね』
『結局片思いなんだって、わかってたはずなのにな‥』
そんな彼女の思惑が透けて見えるから、由美は時々なにも言えなくなってしまうのだ。
お酒が飲めないあなた、コーヒーが飲めないわたし @now9310
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