第2話 サイボーグ

++++これで両眼は死ぬまで、いや、正確に言えば、当人の「寿命より長持ち」する事になった。これからは何を見ようかと、楽しみにしている。


2.サイボーグ

 さて、「清く・正しく・美しい」タカラヅカ生まれで、三十八の女友達がいる。この歳の私にすれば、苦労して捕まえた女。この彼女、もてないからではない、バツイチだから、そんな事情で止む無く独身を通している。離婚が流行(はやり)の昨今、とかく批判が多いようだが、漁夫の利でおこぼれにあずかれて、こんな美人が私と付き合って呉れるのだから、私に言わせれば決して「悪い時代」ではない。


 知り合った切っ掛けは行きつけのスポーツクラブだが、生息地はプールではなく、同じ施設内の陸上競技の間。エアロビクスで、彼女が黒い衣装でバイラバイラというラテンリズムを踊っていた。その姿が、ウサギの毛皮で作ったパンツみたいにしなやかだったから、感動した。訊いたら素直に教えてくれて、誕生日は一月四日で名前は文子と言ったから、ブンちゃんと呼んでいる。


 中二の女の子が一人いると聞いたから、「三十八バツイチ子持ちコンブ」という長いあだ名を付けやった。女の語る処によれば:「三十八辺りのバツイチ女にとって、世のスポーツクラブは誘惑と危険に満ちていて、不埒なバクテリアがひしめいている」そうで、「結婚はもうこりごり」だと言う。

 バイアグラの助けを借りて、こっちは未だ男の内だからバクテリアの一種ではあるが、幸い彼女は私に気を許している。安全な干物と考えているからで、歳を取ると女に警戒されないというメリットは大きい。


 昼間は介護の仕事をやっているが、夜は地区のママさんバレーのキャプテン。立ち姿はスラリと高く、お尻も丸みがあって適度に出ているから、見るだけでどんなバクテリアでもワクワクして、取りつきたくなる。触ったら、触られた本人よりも触った方がドッキーンとなる位に立派。けれども何処かのシマウマみたいに、触った位では、後足で蹴ったりはしない。


 女は食べ物に弱いが、彼女も例外ではない。苦心してやっとこさレストランへ誘いだして、夕食兼用のデートが実現した。よもやま話の序でに白内障の手術を報告したら、「両眼がサイボーグになったのね。永遠の命だなんて、人類の夢よ、素敵!」と、本気かどうか疑わしい励まし方をしてくれた。



明日へつづく

第三話:鎌を掛ける

Kakuyomuには読者数が少ないのでしょうかーーー。読まれている風がないので、張り合いがなく、書くのはここで中止します。

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「女が絡むと不便」な話 @gact

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