雪降る月夜にドブネズミ

作者 佐事宮 猛哲(さじみや もうてつ)

27

10人が評価しました

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★★★ Excellent!!!

正直言って、この小説には癖があります。
口当たりが良いWEB小説の中では埋もれてしまうでしょう。
でも、彼と彼女の世界をちょっとでいいから覗いてみてください。
口当たりはよくないけど、作者の個性が光る確かな何かがこの物語にはあります。
書き手としてはちょっとくやしいくらい。
もしあなたが自分はWEBだけじゃない。ちゃんとした物語を求めているというのであればこの物語はきっと何かをあなたにもたらしてくれるでしょう。

★★★ Excellent!!!

 この小説、主人公はただのドブネズミ。そしてただのドブネズミが、不幸な少女を守るために奔走します。
 ですがこの主人公、良くも悪くもドブネズミ。人の言葉の意味もわかるし頭も多少回りますが、人の言葉も話せなければ特殊な力があるわけでもない。結局少女の話を聞いてやることしかできない無力さが何とももどかしいのです。
 それでも、少女を見守りながら境遇を少しでもよくしてやろうと頑張るドブネズミの姿についつい感情移入してしまいます。ですが白馬の王子さまのように紳士的にはいかず、比喩と皮肉たっぷりの悪態をつきながら奔走するのが何ともドブネズミらしい。
 手を変え品を変え繰り返される、下品でしかない比喩やユーモアに富んだ皮肉、そしてドブネズミ目線の小言やドブネズミジョーク。まどろっこしい言い回しだらけですがスラスラ読めてしまい、この作品の味となっています。個人的に好きなのは「例えば前歯の欠けたドブネズミを二匹並べたからって、急に一際長い前歯を持ったドブネズミが現れる道理は無い」という言い回し。これだけ見ると意味不明ですが、展開と勢いの中で読むと中々しっくりきてお気に入りです。

 そしてこの物語、読者の感情を揺さぶるのがとんでもなく上手いです。
 「奇跡ってやつは結局、見た目が綺麗なヤツが好きなんだ」冒頭に出てきた言葉ですが、この物語そのものです。お世辞にも綺麗とはいえないみすぼらしい少女と、飼われて清潔になったとはいえドブネズミに過ぎないドブネズミ。奇跡が起きない世界で平凡な幸せを手に入れるのがこんなにも大変なのかと、そして不運に抗おうともやっぱりドブネズミは人間の代わりにはなれないのかと、気づけばドブネズミと一緒に一喜一憂していました。そんな物語だからこそ、最後のほんの少しの奇跡が輝いて見えました。

 文庫本一冊ほどの分量ですが、つい一気に読めてしまう良作でした。ぜひ大人にこそ読… 続きを読む

★★ Very Good!!

見た目の美しさ・愛らしさに頼らずに描かれているからこそ、これだけ安っぽくなくて、綺麗に痛ましいのでしょう。ドブネズミと不細工な少女という日陰者にスポットが当たっているおかげで、むしろ真っ直ぐな心を感じられる、本気のこもった物語。

全然違うけど、随分昔に読んだ劇団ひとりの「陰日向に咲く」を思い出した。全然違うけど。

★★ Very Good!!

まだ、途中なのでこのお話が見出し通り、悲劇で幕を閉じるのかは解りませんが。

童話的な世界観の物語です。
作者様が「今回は、比喩表現にとにかく力を注いだ」と言われている通り、主ネズミ公の彼は、素晴らしい例えを、スパスパと切り込んできます。

そこも見どころなのですが、私が一番推したいのは、そのストーリーでしょうか。
話の背骨はありきたりなものです。
素直で優しい少女が、周囲の大人に足を引っ張られ。大人の闇に囚われていくという流れなのです。
大体、その流れだと主人公は少女か。それとも、その逆境を覆す少年が選ばれるのでしょうが。
今回はただのネズミなので、その少女が堕ちていく事を彼は見ている事しか出来ません。
あまりにも残酷で当然の事実なのですが。
それが、ネズミ視点で書かれると、いたたまれません。
自分の事を「ネズミ」と、受け入れてしまったシーンはこの作品の名シーンの一つであり、余りにも悲しいシーンでした。
私は、興奮を隠しきれませんでした。


さて、一つだけ言わせて下さい。
私が読んで気になったのは。
先に述べた比喩表現のところ。ここにあります。
比喩の内容が、とんでもない予想外の表現から来るのに、毎回驚かされます。が。
いつも、そのテンポが一定なのです。
小気味よいテンポで、2~3個の表現を書かれるのですが
毎回、それでは読み手にテンポを覚えられてしまいます。
そう、作者様が違う作品で、書かれていた
「マンネリ」と言うやつです。

今世紀最大の魔球を放っても
何十球と、同じ相手に投げ続ければ、いずれは滅多打ちにあうようになります。

私も、文章のテクニックや知識は決して高くないのですが
やはり文章にも「緩急」があると、なんていうか。

魅せ場を、より効果的に読者に伝えられる気がするんですよ。
毎回違うテンポであの比喩表現の畳みかけを喰らったら、きっとネズミの心情がもっ… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

胸が痛くなるほど切ない、だけど優しい温もりに包まれている。

人語を解するドブネズミは、美人ではないが心優しくお人好しな少女の平凡な幸せを願い続けている。しかし、その願いとは裏腹に、少女には次々と不幸が押し寄せてくる。
それでもドブネズミは少女のために奮闘する。ドブネズミである自分にできることが限られていても、思うように体が動かせなくなっても。


少女を心から大切に思っているドブネズミが、少女を見守っている様子を語っているだけなのに、少女がどうしようもない不幸に転がり落ちて行くのが痛々しくてつらいのに、文章が強烈な引力を持っていて、続きを読まずにはいられない。
特にネズミの語り口調やネズミならではの思考や嗜好が最高にハマっている。どう素晴らしいのかは一話目を読んでもらえばわかるから、とりあえず騙されたと思って開いてみて欲しい。

これが最初のレビューだということが信じられない。こういう良作が埋もれているからWeb小説は面白い。