第6話
俺は、エルフのお姫様ファリャ・ナチュレ―と決闘するため、細い通路を歩きエルフの王タオスと、その他のエルフに導かれて闘技場に向かっていた。闘技場は、王の間の近くにあるらしい。
「おい貴様!!姫様にもしものことがあったらこの俺が許さんぞ!!」
案内の途中、隣にいた謎の緑頭が俺に命令してきた。
「殺すぞ?」
俺は、最大の殺気をまとわせて緑頭を睨む。
「ひっ!?」
緑頭は、俺の後方に逃げるように下がっていた。
「なんだあいつ...」
「立さん、あんまりうちの騎士をいじめないでください」
「虐めてない、被害者は常に俺」
「何言ってるんですか...」
と、ファリャ・ナチュレ―と適当な会話をしているとどうやら闘技場とやらについたようだ。
闘技場は、かなりの大きさで東京ドームくらいはあるんじゃないだろうか?地面は、砂で周りは木の根っこで覆われており、独特の闘技場だ。因みに観客席も完備されている。観客席はすでにエルフで埋め尽くされていた。観客席には、『姫様頑張れ』という垂れ幕と、『中野立タヒね』という血文字の垂れ幕がたくさん下がっていた。
ていうか耳早速いな...。俺がファリャナ・チュレ―と決闘することになってから一時間しかたってないぞ...。まぁ、よく田舎ほど、周辺情報が回るのが早いというが、早すぎて困る。
「立さん、まさかこんなに人が集まるとは思いませんでした...。なんだかすみません...」
「はっ!はっ!はっ!」
「どうしたんですか急に、イカれましたか?」
俺は、笑いをこらえてファリャ・ナチュレ―を見る。
「いやだってお前、こんな大勢の前でお前の醜態をさらすんだろ?こんなに面白いこと他にないだろ?」
俺の目には、もうファリャ・ナチュレ―が絶望して泣き叫ぶビジョンが見えていた。
「最悪ですね、貴方性根から腐ってます。しかし、私はあなたを倒してあなたを利用させてもらいます!!」
「そうか、そうか、お前はこの俺を利用するのか...。やってみろよ?」
俺と、ファリャ・ナチュレ―が闘技場中央に立つ。付き添いだった緑頭も離れていき、観客席からは「中野立タヒね~」「ブゥゥー!!」と豚の様なブーイングが聞こえてくる。
「最高の歓声をどうもありがとう...」
俺の口元がにやける。
「何を笑ってるんですか...?」
「さぁ、お前には分かんよ」
そして等々、今回の審判であるエルフの王タオスが俺たちの間に立つ。
「よし、今回の決闘のルールを説明する。とりあえず、殺しはなしだ。どちらかが降参するか、戦闘不能になった時点で試合終了とする。殺傷力の低い武器の使用と殺傷力の低い魔法の使用はありだ」
とっても単純明快なルールじゃないか...。俺は、用意してあった木刀に目を向ける。
「分かった」
ファリャ・ナチュレ―もその場で頷く。奴の武器はロッドらしい。装備は、フリルのドレスの上から銀の鎧を着ている。まるで自分が姫騎士であることを主張する様な格好だ。まぁ、実際姫騎士らしいが...。
会場が静まり返る。どうやら会場もそろそろ試合が始まることを感じ取ったらしい。
「それでは、二人とも準備はいいか?」
「おい、タオス自分の娘が痛めつけられるシーンを見ても逆上してくるなよ?これは、お前の娘が勝手に俺に挑んできた勝負なんだからな?」
俺は、楽しいショータイムの前に確認しておく。
「いいだろう。約束しよう。ファリャの方は、準備はいいか?」
「はい、お父様!!」
タオスが頷き
「試合開始!!」
そう言った途端、俺は間髪入れず腰に差してあった模擬専用の木刀引き抜き横なぎに振り払う。
「がはっ!!」
ファリャ・ナチュレ―は俺のほぼ無動作の一瞬の攻撃に反応できず、居合切りは胴体に直撃、着ていた銀の鎧が砕け散り、肋骨がバキッという音を立て、ゴミの様に転がっていく。
「雑魚が…」
何が魔法の達人だ。クソ以下の役に立ちそうもないじゃないか...。会場がシーンと静まり返る。と、思うとブーイングの嵐。どうやら、不意打を喰らわせたと思っているらしい。バカな奴らだ。戦いに不意打もくそもない。勝つか負けるかそれが戦いの本質だ。
「ぐっ...」
ファリャ・ナチュレ―が地面にうずくまり、腹を抑えている。タオスの睨むような視線が心地いい。
「おい?お姫様?立てないのか?お前は、その程度なのか?立ってみろよ?ブッ!!」
笑いが込み上げてくる。この敗者を見下している瞬間が実に心地いい。最高の瞬間である。と思っていると、ファリャ・ナチュレ―は、ミノムシの様に立ち上がろうとしているではないか。俺はそれを...。
立ち上がる前に折れた肋骨部分を目掛けて蹴り上げる。
「アギャアアアアアああああああ!!」
ファリャ・ナチュレ―は獣の様な叫び声をあげてのた打ち回り、口から吐血。
「ハッ!!ハッ!!ハッ!!」
俺は、高笑いをする。会場の睨むような視線がとてもとても楽しいじゃないか。
「キサマ...!!」
我慢の限界に来たのか、審判のタオスが俺に向かってくる。「
どうやらタオスは、腰にさしてある銀色に輝く実剣を引き抜き、そのまま突き刺してくるようだ。やれやれ、こっちは木刀だというのに...お前は実剣を使うのか...大人げない...。そんな奴にはお仕置きが必要だろ?
俺は、タオスが剣を引き抜く直前、柄を持った手目掛けて木刀を勢いよく振り下ろす。
「あ゛っ゛!!」
タオスは苦悶の表情を浮かべ、右手首があらぬ方向に曲がる。俺はそのまま流れる様に木刀を前に突き出しタオスの鳩尾に一閃。
「お゛っ!!」
間髪入れずに乱舞。あらゆる間接目掛けて木刀を高速で振り下ろしてく。関節が外れていく音が実に心地いい。
「ぐああああああああああ!!」
タオスは、ねじれるように回転しながら吹き飛んでいき、そのまま地面に叩きつけられた。
「こ、国王様!!」
緑頭が駆け寄ってくる。会場全員が立ち上がり、観客席を降り鬼の形相で俺目掛けて走ってくるではないか。そんな奴らに俺は…。
「おいおい、俺が悪いのか?ファリャ・ナチュレ―は弱かった。王は決闘の邪魔をしてきた。終いには、木刀の俺に実剣を引き抜こうとしていたんだぞ?おかしいのはどっちだ!?」
会場中に叫び散らす。しかし、奴らは血眼になって俺の方に向かってくるじゃないか...。
「やれやれ...付き合ってられんな」
俺は、闘技場入り口目掛けて走り出す。こうなっては、話し合いは無駄だ。これだから無能は…。
俺は、観客の隙間隙間を「
俺は、このままエルフの国から出ることにした。
魔人がいる世界で~地獄の中からでも這い上がる~ カルシウム @redlight
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