ハイデッカー
イリエワニはおもに汽水域に棲んでいるが海を渡ることもある。インド南部から海流に乗って島々を旅し、日本へやってきた個体もいた。
夜行バスは重そうに揺れていた。寝息と衣擦れと走行音とが通奏低音になり時折大きないびきが響く。消灯され、たがいの顔はわからない。ワニかもしれない。なんでも食べる、海を渡るワニがとなりで眠っている。かえって落ち着く気もした。それならわたしもワニだろうか。
座席の後部には運転手の仮眠室がある。アコーディオンの扉があり、中にふとんが見えた。小さい扇風機も。二人の運転手はそうっと交代し、そうっと眠った。週末、潮汐流に乗っておびただしいバスが移動する。ワニたちはおとなしく仰向けになる。
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(300字)
#Twitter300字ss・お題:旅
(ほぼ)300字小説集 オカワダアキナ @Okwdznr
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