pink

 国道。店や畑や家々を染める西日の色で、冬が去ったとわかった。桜が咲いてもしぶとく寒さはつきまとったが、きょう、日差しはうすいピンク色をしていた。女と女はいまが春だとみとめた。日差しが開いた。冬の間は光さえつぼみだった。


 肉どもは積まれ、絡まり、白い脂でねっとりよじれている。女たちはトングと指をひとつにした。肉はていねいに引っ張られ、広げられ、赤にピンクに咲いた。したたる汁にみれんはない、ひっくり返す。花びらはつぎつぎ焼け、じくじく縮んでゆく。女たちは勢いよくかみちぎる。季節が過ぎるのを知っているから。過ぎてゆくことが愛しいから。あぶらまみれのくちびるをぬぐい、よれた化粧もいっしょに剥いでしまう。


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(300字)



#Twitter300字ss・お題「咲く」

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