イケメン王子様? ガラスの靴? それ、どこの国の料理ですか?

かの有名な童話や御伽話を題材に、時代背景も設定も完全無視で突き進む本作。イメージどおりのキャラだって誰一人として出てきません。
原作を忘れそうな程のこの作品を目にした原作者は今、遠い空の上である方は悲嘆し、ある方は憤慨し、そして最後には全員爆笑していることでしょう。

私がこの作品と出会った時にはすでに完結していたのですが、是非、リアルタイムで更新を追いたかったなと悔やまれます。なぜなら、コメントという名のしょうもない突っ込みを毎話せずにはいられない程とにかく面白い! 見習いたいくらいのコメディセンスが光っています。
それに丁寧に返して下さる作者様。申し訳なくて何度ぐっと自分を抑えて次話に進んだことか。でも、気付くとまた突っ込んじゃってるんですが。

しかし、この作品の魅力は笑いだけではありません。
私は特に特別編の最終話と、物語のフィナーレでさり気なくタイトルを用いた展開の秀逸さに心打たれました。ここで物語がぐっと引き締まるのです。

そして忘れてはならないのが本作のジャンルに設定されている恋愛要素。
途中まで、八割方恋愛とは無縁の方向に見事にスルーしていくヒロインに、なぜ恋愛なのだろう、いっそのこと、ジャンル『シンデレラ』を新設してはどうだろうかと何度本気で思ったことでしょう。

お相手の王子様が悲劇のヒロインならぬ悲劇のヒーローの称号を与えたい程終始不憫で。それでもめげずにアプローチする姿にキュンとして。
物語の終焉を迎える頃には感動で涙が出て来ます。

最近ちょっと笑えてないなって方。
本作を読むと、きっと笑顔……どころかお腹を抱えて笑わずにはいられないことをお約束します。

まだ見たことのない笑いと感動、主に料理、何は無くとも料理、絶対料理、に包まれたシンデレラの世界へ、一歩足を踏み入れてみませんか。

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