よくある異世界転生ものかな?
異世界グルメものかな?
そんな風に思って読んでいる時期が、私にもありました。
この物語は、主人公とかかわった人間たちが、次々に魅力的な気高さを覚醒していく物語です。
凡庸な冒険団のリーダーだったヤサウェイは、英雄となって邪悪な女傑を退け、仲間たちの魂を救います。
そのうえで、主人公の擦り切れていた心を目覚めさせるのです。
そして、中盤の世界で出てくるメルクオーテとサクラ。
ツンデレ的なメルクと、どこまでも無邪気なサクラちゃん。
彼女たちの振る舞いが、どれほど主人公の救いになったでしょう。
その魂の輝きは、決して失ってはならないものです。
消させていけません。
そう、消させてはいけないのです。
この作者、読者が感情移入したキャラを殺していくことに定評があります。
みなさま、どうかこの小説を読んで、キャラクターたちを愛してください!
そして、大団円が訪れるように祈りを捧げましょう!
『口にするたび異世界転移』というタイトルから「おっ、新しい異世界グルメものかな」という興趣を引かれますが、作品を開いてみると 「残酷描写有り」「暴力描写有り」のレイティングに加え、タグ欄には「シリアス」「ゾンビ」「虫の息ヒロイン」「死の運命に抗う者」など何やら不穏なワードが……(最新話現在)。
「『食べ物』を口にするたび違う世界に転移してしまう」という主人公の体質は、彼がその世界でどれだけやり残したことがあったとしても何かを食べた瞬間にその世界から離脱させられてしまうということであり、いわば強制シャットダウンです。実際、主人公は物語開始時点ですでに122の異世界を経験済みらしく、語り口にもどこか諦念や悲哀が漂っています。
何の『食べ物』が、どのタイミングで転移のトリガーとなるのか分からない状況で、主人公は運命に抗っていけるのか――。
ライトな文章かつ毎話の字数もコンパクトで読みやすく、今後も続きが気になる作品です。