食われた僧侶の祟り
「あります。腐骨肉は殺されたお坊さんの祟りなんです」
「祟り?」
「お坊さんの肉も内臓も皮もみんなで食べたそうですけど、膝と肘の周りだけは食べ残しました。
硬くて食べづらかったからです。骨や食べ残しは川の向こうの山に埋めました」
「なるほど。殺されたうえに食べられたら、祟りたくなるのも分かる気がするな」
「そうではありません。
お坊さんは自分の命と引き換えに病気を治してくれたんです」
「その坊さんは、最初から食べられてもいいと思っていたのか……」
「それなのに村の人たちは膝と肘の肉を無駄にしてしまいました。
だから怒っているんです」
「自分の死を無駄にするなってことか」
「お坊さんの骨を埋めてからしばらくして、村の人たちの膝や肘にコブができるようになりました。
膝と肘を食べ残したからです」
「それが腐骨肉?」
「そうです。そのころ村に住んでいた人の子孫が、今でもこの村の近くに散らばって住んでいます。
腐骨肉に罹るのはそういう人だけです」
「その話、信じてるのか?」
「信じています。あれは本当にお坊さんの祟りです」
「絶対に迷信だよ」
俺は運ばれてきたビールをグラスに注いで一気に飲み干した。
冷えていてうまい。
しばらくするとテーブルの上に料理が並んだ。中央に魚の蒸し物がある。
「この魚、何?」
「桂魚です。日本にはいないですか?」
「見たことない」
「おいしいですよ」
俺はその魚を食べてみた。
上海のレストランで泥臭い魚を食べてから魚は敬遠していたが、この魚は海の白身魚と変わらない味がする。
エイミーは箸で器用に魚の目玉をえぐって口に入れた。
「それ、おいしいの?」
「目にいいんです」
「え?」
「私、ちょっと近視なんです。だから」
「そんなの効果あるの?」
「ありますよ。渋沢さんも食べてみますか?」
「いや、俺は遠慮しとくよ」
腕切り、脚切り、ダルマの屍肉 久遠寺遥 @ykuonji
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。腕切り、脚切り、ダルマの屍肉の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます