なにげない日常の習慣を題材にして、たんたんと無垢な語り口で書いてあるところにとても好感が持てました。起承転結のきちんとある物語で、どうなるかと思わせてしんみりさせて終わる。お見事です。
いくつか細かい点で気になったとことろを。
文中の「一日中」は「一日中」ではないですよね。お母さんと話して落ち着いたところまで=おそらく夕方。
心理描写がもう少しあってもよかったと思います。おそらく「ぼく」は、たまごがなかった時にかなしいと同時に不安を感じたと思います。日常にヒビが入った不安、お母さんはどうしたんだろうという不安、お父さんのことを思い出して不安などなど。
そのかなしみや不安の感情あるいはプラスの感情の描写があると、その後お母さんと会って、「うれしく」なる時の描写も奥行きがでそうな気がしました。
もちろん、このままでも素敵な作品ですし、描写を増やすと冗長になる危険もあります。
本作では大した事件はおきません。
剣も魔法もでてこないし、恋愛もしないし、冒険もしない。
登場人物はほぼほぼ2年生の男の子とお母さんだけ。
ぶっちゃけてしまえば、幼い子が朝ご飯を食べて学校に通う日常を描いているだけです。
それなのに。
それなのにどうしてこんなにホロリとするんでしょう。
この子は一言たりとも『さびしい』なんて言っていないのに、どうして『さびしいのだろうな』って読者に思わせられるのでしょう。
この物語におけるたまごかけごはんは、物語の象徴としてとても大きな意味があります。
大人からすればなんでもない、ひとつのたまごが、この子にとってはとても大きなモノなのです。
こういうお話も、Web小説の世界でもっと評価される世の中が来て欲しいなと思います。