『Xtal』第16回入選作
解凍した刹那違いが判った。然し普通のウィルス型ドラッグと何が違うのか詳細には判断しかねた。Xtalは脳内サーバーに投薬すると世界の何処かで同時に使用しているサーバーを自動的に検索し記憶や思考を共有するという一歩間違えば自我同一性を破損しかねない代物だった。
男は危険を察知し直ぐにケーブルを絶った。真っ白で空虚な部屋が歪み虹色に見えた。軽い幻覚で済み僥倖だと思った。
自己検索すると他人の記憶フォルダが残滓として見付かった。安物のソフトでウィルスチェックすると感染はしていないが無闇に容量が大きいことが判った。
深呼吸をした後開いてみた。中は分割して暗号化されているらしく結合ソフトを使って復元してみるとほんの数分のムービーファイルが出来上がった。
容量の割に短すぎるムービーである。詳細を観ると作成者は『unknown』となっていた。
男はムービーを再生した。
一瞬にして脳内メモリに異常な負担が掛かり全身が痺れた。眼球型モニタに映されたのは人が殺される寸前の記憶映像だった。悪趣味な連中で売買されていると噂には聞いていたが実際に目にしたのは始めてだった。数秒刻みで男は何度も死を疑似体験した。そして最後に不可解な映像が映し出された。
直前の映像から鑑みて死の直後数秒間の記憶保存に成功した死後の世界の映像らしかった。このお陰でさらにメモリに負担が掛かり男は
男はこれ以上のドラッグは無いと確信した。
『虚構の玩具箱』創英社超短編コンテスト応募作品集 九頭龍一鬼(くずりゅう かずき) @KUZURYU_KAZUKI
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