このお話はアパートでの怪奇現象が物語の主軸ですが、主人公のイシイの成長も見応えがあります!
はじめは頼りなく、仕事や人間関係を放り出して引っ越してきたイシイに怪奇現象が襲う…。この不気味な怪奇現象や弱々しいイシイの出だしで私は完全に騙されていました。
アパートの怪奇現象がエスカレートしていくなかでイシイの頼りなさにイライラしたりしつつ…意外な展開に目を見張りました。誰がこんな結末を予想できたでしょう!作者様の巧みな文章に惹き込まれあっという間に結末まで読んでしまいました!
アパートでの怪奇現象の描写が本物にお上手でゾクゾクと鳥肌が立ちました…!
この結末は…ぜひ読んで確かめてほしいです!
傷心のこころを抱えて引っ越してきた主人公が目の当たりにする怪異を、一部ミステリーの要素も交えて進むこの物語。
しっかりとした『恐怖描写』もさることながら、主人公の心理描写にもぐいぐいと惹かれます。
弱気で、引っ込み思案で、だけど恋心は押さえられなくて……。
それなのに、あと一歩が……。
そんな主人公が、ぎりぎりのラインで踏ん張る後半。
怪奇現象に立ち向かう彼の様子に、「頑張れっ」と思わず応援してしまいました。
第一話『隣の部屋』の読後感は、ホラーでありながら非常にさわやかです。
『付記』については……。
夜、読んではいけません……。
いや、真面目に。
本当に。
これは、怖い……。
不気味な噂が絶えない街、日岸町。
この街の古いアパートに住む「イシイ」に襲い掛かる、戦慄の体験談。
隣人の肩に見える、見えないはずの手。深夜の物音。不可解な夢。非日常な恐怖に加え、悲惨な過去、街で起きたとある事件、アパートに忍び寄る謎の人影、知りたくなかった事実など、現実での出来事がイシイの精神を追い詰めていく。
そしてこれらの要素が一本の線に繋がり、そこに生まれた新たな謎が更に恐怖を加速させていく…。
洗練された構成によって、まるであやとりのように形を変える「恐怖の糸」。
次第に肥大していく霊的現象と共に、隣人女性との関係性が変化していくのも見所。
怪奇だけに焦点を置かず、これまでの自分と決別する為に恐怖に抗おうとする男の姿を描いている点も欠かせない。
度胸のある方は「付記 日岸町奇報」も是非見て頂きたい。
深夜に1人で読む事を躊躇ってしまうほどの恐怖に挑戦してみて下さい。
一般人が遭遇する怪談話を扱ったスタンダードなホラーです。
心理描写や怖さの演出は手堅く、きっちりといい仕事をしてくれます。
この作品の面白さは、その構成でしょう。
最初にまず、青年の葛藤や傷の克服を交えた、現代風の怪談が。
次に付記としてどストレートなオカルト話が続きます。
ちょっと「恐怖新聞」(古い例えかな……)を思わせるこの付記が、本編とは違うテイストで、まさに“二度美味しい”というサービスぶり。
ホラーで原因や由来を詳細に書いてしまうのは、無粋というものです。
残された数多くの謎は、人の知る所ではないのか、いずれ後の話でも絡んでくるのか……
続きを楽しみに待たせてもらいつつ、第一話「隣の部屋」を読んでのレビューでした。
主人公の男性がある女性に恋をして、辛く悲しい失恋を経験します。
主人公はそんな失恋で傷ついた心を癒そうと、怪異の噂が立つ町へと赴きます。
なぜか?
人は日常で起きた喪失を非日常の中で埋め合わせようとする生き物だからです。
(傷心旅行という言葉があるでしょう?)
作者はこれを作中で「人間は何かから本気で逃げ出したい時、今いる場所より明るいどこかに行きたいとは不思議と思わない。むしろ暗い方へ淋しい方へと足が向く」と看破します。
鋭い洞察だと思いました。
町に着いた主人公は、暗く寂しい木造アパートで、偶然にも失恋した女性と同じ名前の別の女性と出会います。
そしてそこで彼女と怪異体験を共有することになるのです。
果たして主人公の心の傷は本当に癒されるでしょうか。
ホラーでありながら恋愛小説でもある本作は、丁寧な情景描写とみずみずしい心理描写を交えた秀作です。
ぜひご一読ください。