第2話 7人の若者

 伊勢牧市に住む22歳の大学生、沢村秀栄は同じ大学に通う友人の桐野典長と杉原裕也、萩本和希とそれぞれの恋人である飯尾菜々美と滝本由香、浜本紀子の7人で伊勢牧海水浴場へキャンプに向かっていた。このメンバーの中で恋人がいないのは秀栄だけだった。

「お前早く彼女作れよ~」

秀栄の車の中で桐野が言った。

「ああ、そのうち作るよ。ところで桐野、お前課題終わったか?」

荷物と友人たちを乗せた車を運転しながら秀栄が言った。

「課題?まだ1ミリも手つけてねぇよ。」

「だろうな。」

「桐野遅すぎんだろ~俺7日に終わらせたぜ。」

彼らの通っている大学は今春休みだった。

 海水浴場近くの喫茶店で皆は朝食をとった。中年の夫婦が営んでいる喫茶店だ。

「これからキャンプか?」

会計の時に店主が聞いた。

「ええ、そうです。」

秀栄が答えると、

「お前ら今日が何月何日か知らないのか?25年前にあの事件が起きた日だぞ、あそこには近づかない方がいい、本当だ。」

横のカウンター席に座っていた50代半ばの男性が言った。

だが彼らはそんな男性の忠告を無視して店を出て車に乗り、海水浴場へ向かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

2月9日 旗野 基司郎 @Hatoya

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ