終幕
(モノローグ 終)
最後まで読んでくれてありがとう。
これが、俺の専従書記長として過ごした約半年間だ。
もちろん、このあとも書記長としての仕事は続くし、やっぱりいろんなことがあったのだけど、それを語るのはまた別の機会にしよう。
あの団体交渉が終わったあと、外薗本部長は降格となった。解雇の次に重い懲戒処分だ。
社長は“出勤停止”で納めようとしていたらしいが、外薗本部長自身が降格を申し出たらしい。
今では管理職ではなく、ベテランの営業として後進の育成に尽力しているのだとか。
あの人の持っている能力を、ちゃんと正しく活かしてもらえているなら、会社としては大きな力になるだろうと思う。もちろん、組合としても、その部署はちゃんと注意深く見張っている。
労働組合は、ただ会社に対立する機関ではなく、横から客観的な目で見る監査役のようなもの。
会社が健やかに成長するのを促進するために、もし何か間違ったことがあったなら、しっかりと指摘をしてそれを正す。それが、組合の役目であり、義務でもある。
あの仕事をするなかで、それを学ばせてもらった。
会社と組合がそういう関係性でいられるのなら、どんな厳しい情勢のなかでも、きっと生き残っていける。俺は、そう思う。
ああ、そうだ。
最後に、梅宮さんのことも言っておかないとな。
あの後は、まあご想像の通り「もっと他にやり方があったんじゃないか」だとか「議事録に残っていたら私が退職していた」だとか、それはもうたくさん怒られた。
でも、最終的にはお祝いの乾杯をさせていただいて、ええと、まあ、そういうわけで……。
あの日、完全に飲み潰れた彼女をおんぶして家に送るとき、ちょうどお義父さんとばったり会ってしまい、そこで一悶着あったりもしたのだが、そのことは今も真希さんは知らない。
いつか、ケンカでもすることがあれば、交渉の材料に使おうと思う。
それが書記長、だからね。
しょきちょー! 穂実田 凪 @nagi-homita
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