れぽーと3

サーバル「ふうっ。ここまでくれば大丈夫だよね?」


そこは、木がたくさん生えてる場所で、隠れるのにぴったりなんだ。

胸の痛みは少しおさまった……かな? ちょっとピリピリする。

ふしぎだけど、大丈夫!


サーバル「きたよー!」


私が呼ぶと、木の影から大きな耳がぴょこぴょこ動いた。


タイリクオオカミ「あまりおおきな声で呼ぶな」

サーバル「あ! いたー!」


タイリクオオカミはね、たまーに変なことを言ってみんなを怖がらせるんだけど、両目の色が違うのがとーっても綺麗で、おはなしを作るのが得意なフレンズなの!


アミメキリン「おそいです! 何をしていたのですか!」

サーバル「わわっ、アミメキリンもいたのー?」

アミメキリン「事件があるところに名探偵あり! です!」

サーバル「タイリクオオカミについてきただけでしょ?」

タイリクオオカミ「しかも別に事件ではない」

アミメキリン「ふぐぅ……」


アミメキリンはね、タイリクオオカミのマンガの大ファンなんだ。いい子なんだよー! 推理はぜんぜんダメだけど!


サーバル「そう! 今日はかばんちゃんのかんさつ! トキのところに行くって言ってきたから完璧だよ!」

タイリクオオカミ「トキのところに……何しに?」

サーバル「えっ」

タイリクオオカミ「トキに用事なんてないだろう」

サーバル「うーん……たしかに……」

アミメキリン「なんですかその穴だらけの計画は! バレるに決まってます! 絶対にッ!」

タイリクオオカミ「ちょっと静かにしてもらえないか」

アミメキリン「はい先生!」

タイリクオオカミ「……かばんは賢いからな。たぶんバレてるぞ」

サーバル「んー、疑ってる様子はなかったけど……」


「うわーーーーー!」


アミメキリン「悲鳴だ! 悲鳴ですよこれは!」

タイリクオオカミ「聞けばわかる。しかしこれは……かばんの声じゃないか? なあサーバ——あれ?」

アミメキリン「い、いない! サーバルがいないです! 失踪事件です!」

タイリクオオカミ「いやぁ……失踪というより、疾走かな」



サーバル「かばんちゃん、かばんちゃん、かばんちゃん!」

視界がぐるんぐるんする。

かりごっこをしてる時より早く、

もっと早く、

ずっと早く、

走る、

走る、

走る!

かばんちゃんが危ない!


「かばんちゃん!」

「サーバルちゃん! どうしてここに?」

「そんなことより、セルリアン!」

「う、うん。サーバルちゃん、助け——」

「言われなくてもっ! うみゃみゃー!」

飛ぶ! 

「かばんちゃんを傷つけないで!」

セルリアンを……かる!

「かばんちゃんにこわい思いをさせないで!」

自慢の爪で、

セルリアンを、

一撃で、かる!


私、何してるんだろ?

自分のせいで、かばんちゃんが、危ない目に……。


失敗だー!

かばんちゃんを観察する計画、失敗!


×


「ありがとう、サーバルちゃん。助かったよ」

「ううん、ちがうの。私……」

「本当はトキさんのところに行ってないんでしょ」

「どうしてわかったの?」

「うーん、なんとなく?」

「なんとなくでわかっちゃうの?」

「すごく必死だったから、何か理由があるのかなって」

「バレバレだったんだね」

「でも実は……ちょっとの間なのに一緒にいられないのは少しショックだったけど……」

「うぐっ!」

「でもぼく、信じてるから。サーバルちゃんのこと」

「かばんちゃん……」


ごめんなさいって言いたかったけど、かばんちゃんを余計困らせると思って、言わなかった。

言わなくても、わかってくれる気がした。

甘えちゃってるかな? 

でも、許してくれる気がしたんだ。


「ねえサーバルちゃん」

「なに? かばんちゃん」

「たぶん、今から言うことって少し恥ずかしいことだと思うんだけど……」

「恥ずかしいこと? 大丈夫だよ!」

「サーバルちゃんはね、ぼくのヒーローなんだよ」

「ひーろー?」

「一緒にいると力が湧いてくるってこと!」

「……そっか!」


じゃあ、かばんちゃんも私の『ひーろー』なんだね。





【かばんちゃんかんさつれぽーと】

かんさつけっか:かばんちゃんはひーろーである!

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かばんちゃん かんさつれぽーと 吉永動機 @447ga

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