まだふみも見ず天の橋立

作者 SHASHA

57

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★★★ Excellent!!!

大江山 ゆくののみちの 遠ければ まだふみもみず 天の橋立

という、平安時代に活躍した高級女官・小式部内侍の一首をモチーフにして作られた作品です。
小式部内侍は名歌人・和泉式部の娘であり、この歌も、中納言藤原定頼に「歌合の際、母(和泉式部)に代わりに詠んで貰う使者は着いたか」という凄まじい嫌がらせの言葉に返したものとなります。

ですが。この物語の主人公は定頼その人です。定頼自身も名歌人・風流人であった藤原公任を父に持ちます。本質的に、小式部内侍と同じ立場の人間なのです。
その着眼点が、逸話を、嫌なおじさんに嫌なこと言われたというレベルに留まらせず、偉大な親を持つ息子・娘たちの悲哀という深いところまで持って行ったというのがこのお話の魅力です。
2話の最後の節は個人的に感極まり泣きました。
……彼女と彼は、同じ心の傷をもっている……。分かり合いすぎて心が通じ合ってしまうほどに。
そこが、私には切ないものに見えました。


とはいえ、深刻ではなく、ほのぼのとしたコメディ的な文なのと、定頼が可愛いので、非常に読みやすいです。
平安好きな人にも、百人一首好きな人にも、もちろんそうでない人にも、おすすめです。

★★★ Excellent!!!

平安時代も好きで、知っている有名な和歌が題材で、どんな話なんだろう?とわくわく読み進めたら……。

乙侍従との最初の会話で、定頼さまの魅力にやられてしまいました。
なにこの愛すべきへたれさん……(ぽっ)

定頼様とは対照的に、乙侍従も小式部内侍も女性陣は格好良くて素敵で、魅力的なキャラクターに作者様の実力のほどを感じました。

素敵な作品をありがとうございます!
心にときめきが補充されました。

★★★ Excellent!!!

名歌誕生の裏側で繰り広げられた……ラブコメだ!これラブコメだ!と言うのが率直な感想でした。

主人公こと定頼が可愛らしい(と言ってしまいますが)魅力に溢れているように、彼とは対象的な女性も魅力的で魅力的で……。彼をこてんぱんにしてくる凛々しい女性、彼のああいうところがいいと言っちゃう「お姉さん」のような女性。キャラクター属性(この作品で言うと歴史がベースだから人物の持つイメージと言った方がいい気がしますが)がメリハリを効かせてえがかれているのが個人的なツボでした。作者様の「キャラクターの描き方」がとても好きです。

それから物語のテンポの良さと人物の掛け合いにくすっとさせられる「可愛らしい」物語だ、とも思いました。定頼がいわゆるヘタレなのも効果的に働いているのでは。愛すべきアホの子、あるいはヘタレはとても可愛い。

★★★ Excellent!!!

大江山 いく野の道の 遠ければ まだふみも見ず 天の橋立

百人一首にも入っている、小式部内侍の和歌です。
どういう状況で詠まれたか……?

小式部内侍は、和泉式部という偉大な歌人を母に持つ女性です。
そこに、藤原公任という偉大な歌人を父に持つ男、藤原定頼が「どうせお母さんに歌作ってもらってんだろう?」みたいなことを言ったのに切り返した、というやつなのですが、この話、それを定頼目線で語っているのです。

これが面白い面白い!
何といっても作者の描く定頼のヘタレっぷりの可愛いこと!
結局は逸話通り小式部内侍にコテンパンにされるのですが、その姿の愛くるしさに、「もう、君は一生負けていなさい」と慰め(?)の言葉をかけたくなります。

しかし、そう思ったのは私だけではないようで……。
作中で定頼の愚痴を聞く人物のリアクションもポイントです。

★★★ Excellent!!!

『百人一首』でも有名な歌人小式部内侍と定頼のやりとりがテンポ良く進んでいきます。

くすりと笑いたくなる定頼に対し、小気味いいほど凛々しい小式部内侍。
カッコいい……。惚れそうだ、小式部内侍。

学生の頃、学校の先生が、

「昔の日本人の『美人』の条件に、『頭がいい』(和歌がすぐ詠める。返歌ができる)が入っていることを良く覚えておきなさい。容姿ばっかり磨いても、この国の男はなびかないんですよ」

とおっしゃったことを思い出しました。

★★★ Excellent!!!

十訓抄にある大江山のエピソード。
教科書で習ったことのある人も多いのではないでしょうか。

このお話は和泉式部側ではなく、相手の定頼目線で紡がれています。
授業で習ったお話の裏エピソード。

ほんのちょっとマヌケな奴だと思っていたのが、乙侍従の最後の「あんぽんたん」でがらりと印象が百八十度大回転。
定頼のマヌケさは、彼の軽快な口ぶりが拍車をかけて、良い笑い者です。

───乙侍従のほんのちょっぴりの淡い恋心を添えて……

★★★ Excellent!!!

きっと千年前にこんなやりとりが繰り広げられていたんじゃないかと思わせてくれます。

お互い偉大な親を持ってしまった。超えたくても超えられない親の壁。
きっと彼女だってそうに違いない。
ちょっとからかってみるか。

優しいカノジョは止めてくれたのに……。

百人一首に登場する和歌の誕生秘話です。
古文だなんて考えるから堅苦しいのです。
明るいラブコメ、出世にもがくお仕事ドラマだと思って読んでみてください。楽しいですよ。

★★ Very Good!!

百人一首の解説本に掲載したらいいんじゃないだろうかこれ、というのが最初の感想。アホの子・定頼とわざわざ話に付き合ってくれる聖母・おとのやりとりがナイスです。こんな感じの解説なら、楽しく歌を覚えられそう。

案外、こんなゆるーい感じでかの知的なエピソードは生まれたのかもしれません。愛すべき(?)アホの子が、身近なところに落ちている恋に気づくのはいつなのか。続編があるなら読みたいです。