ホームランド・スタンドアローン

作者 七瀬夏扉@ななせなつひ

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17人が評価しました

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★★★ Excellent!!!

 伊藤計劃氏の作品(特にハーモニー)を読んだことのある方なら見覚えのある、もしくは似たような系列のガジェットに気づくことができるだろう。設定にも氏の魂が宿っている。
 そしてそれらが七瀬氏特有の作風と混ざり合い、新しい一本の短編としてできあがったのがこの作品だと思う。これは氏へのトリビュートとして相応しいものだと思う。(なんか上から目線っぽくてすみません^^;)

★★★ Excellent!!!

 カズオ・イシグロ著『わたしを離さないで』を思わせる冒頭、少年少女たちは戦場へ出荷されるため育てられているのだという。
 けれど、そんな絶望的な境遇にあって彼らはあまりに幸福だった。
 その幸福と喪失、そして人類への愛情を描いた中編。

 本作の見どころは、「ヒューマノイド・ドローン」と呼ばれる少年少女たちの慎ましく切ない交流、見え隠れする不穏な影と後半のどんでん返し、そしてあまりに絶望的な人類への愛情だ。

 互いに接続され完璧な相互理解を行うヒューマノイド・ドローンたちは、今の私たちが享受できないような幸福を得ている。
 その静かで満たされた描写は美しかった。
 もっと読んでいたいと思った。

 けれど、彼らは兵器なのだ。

 自らの半身にも等しい仲間たちとは、いつか別れなければならない。
 彼らは穏やかに抗い「おまじない」をかわす。

 おまじない。
 それは、互いに名前を付け合うこと。

 ヒューマノイド・ドローンは死んでしまうが、名前は残り続ける。
 たとえその名の主が死のうとも、頭の中で思い返し、呼びかけることはできる。

 そうして沢山の半身を失い、沢山の名前を刻んだ主人公は、幾度もの戦いを経てこの世界の秘密を知ってしまう。
 そしてその真相を、仲間たちへの愛情を、人類への愛情を、物語として残す。

 どんでん返しから結末に至るまでの描写は圧巻だ。
 前半の穏やかさに引き立てられ、主人公の経験した激情は読者すら侵すほどの熱量を持つ。
 紛れもない私たち、人類に向けられた主人公の愛情を、私は受け止められるのだろうか。
 そんな事を考えてしまう。
 そして主人公が同じくらい深く愛した仲間たち。
 彼らの為にできることは何だろう。
 その選択がタイトルとして、この物語を規定する。

 相互理解、無為の愛情、幸福とは何か、何が残せるのか。
 そんな深淵なテーマを投げ… 続きを読む

★★★ Excellent!!!


人類のために存在し続ける、純粋な彼ら。
仲間と共に過ごす大切な場所は、小さな楽園のようです。
待ち受ける運命の過酷さと、繰り返される「大好きな人類」という言葉があまりにも切なくて、泣きたくなりました。
赤いアネモネの花が咲き誇る様子も、いつまでも心に残っています。
胸が痛くなるほどの、静かな哀しみと美しさに満ちた世界。
本当に素晴らしい作品です。

★★★ Excellent!!!

人類によって人工的に作られた「ヒューマノイド・ドローン」たちの物語。
純粋な子供たちに、魅力的なヒロインのセラ。彼らが本当に魅力的で、世界観やストーリーも、残酷で切ないのに、とにかく繊細でキラキラしてて美しいです。物語は最初から不穏な予感を仄めかしつつも穏やかな調子で進んでいき、それだけに胸が締め付けられます。そして、色々考えさせられます。人類ってなんだろう。命って?
忘れがたき故郷のように、心に残り続ける名作です。

★★★ Excellent!!!

 タイトルが、すべてを語っていたにも関わらず、最後まで読み切るまでその意味にまったく気がつきませんでした。

 主人公にとって、まるで残酷な夢から目覚めさせるような「おやすみ」は、彼が大好きだった人類、それから『子供たち』に撒かれた悲しくも残酷な悪夢へ誘う子守唄のようでした。


 とにかく、ぜひ読んで打ちのめされてくださいm(_ _)m

★★★ Excellent!!!

作者は『ひとりぼっちのソユーズ』の七瀬夏扉さん
ソユーズ同様、やわらかでどこか寂寥感のある文章と世界観に引き込まれます


ひとつひとつの章がほどよい短さなのも、読みやすさの理由のひとつかも

そしてきっと最後に「スタンドアローン」の意味を知る

あまり詳しく解説するのは野暮というもの
ぜひお試しあれ

★★★ Excellent!!!

不穏な設定とは裏腹につづられていく純粋な感情。
主人公の心境を反映するようにひとつひとつ区切られたことば。
他の方も指摘されていましたが、『わたしを離さないで』をベースに名作SFへのオマージュが見え隠れするところにひきこまれます。カクヨム版伊藤計劃トリビュート企画主催者さまの作品ですが、どちらかというとカズオ・イシグロの影響が強いかな。短編でさらっと読めるのでSFを読まない方にもおすすめです。