平衡

「平衡は高校化学の中で一番わかりにくい。だからそのつもりで用心して。」


 平衡について

・まず平衡とは何か?

aA+bB ⇄ cC+dD


これで→と←の速さが同じ結果、見た目は止まっているように見える状態。


ポイントは「反応が起こっているにもかかわらず元のままでいる怠け者がいる」という事。

つまりこの状態は、完全には進行しない中途半端な反応で起こる。

「塩酸」や「水酸化ナトリウム」では、完全に進行するので起こらない。


起こるのは、

・弱酸・弱塩基の電離(電離しない物がある)

・塩の加水分解(電離するのとしないのがある。特に緩衝液の塩では。)

・緩衝液の緩衝作用(酸や塩基を入れてもH⁺やOH⁻にならずに他のとくっついてしまう。)

・共通イオン効果

などがある。


平衡状態の中では、三つや四つのイオンが存在する。(いくつかは式による)

つまり変化形と元の形が仲良し状態になっているのである。


しかもこの止まっている時は掛け算にするとなぜか一定値を示す。

(温度が同じなら、触媒を入れようが一つを足してみようが常に同じ値を示す。)


この定数をなぜかいつもKであらわし、このKを「平衡定数」と呼ぶ。


1A+2B→3C+4D

とすると、


K=

 [C]³×[D]⁴

―――――

[A]¹×[B]²


となり、

この[ ]は、濃度(㏖/ℓ)と使う「濃度平衡定数」と、

分圧(㎩)を使う「圧平衡定数」があり、

それぞれ単位は違うが、意味するところは全く同じである。

なぜなら、分圧はすなわち、一リットル中に入っている㏖数の割合という事だし、濃度も同じだから。

気体の時は㏖数よりも㎩を使う方が解きやすいからそうしている。

(濃度の時はKa  圧力の時はKp  と書くことが多い。)


そして気を付けるのは単位!

Kの単位はその時によって違う。


上で使った、 K= [C]³×[D]⁴(右辺)/[A]¹×[B]² (左辺)

この式でのKは、それぞれが㏖/ℓで、計算してみたら、

(㏖/ℓ)³/(㏖/ℓ)⁷で、すなわち、1/(㏖/ℓ)⁴ということになる。

だからこのときのKの単位はこう書ける。

→(ℓ/㏖)⁴((㏖/ℓ)をひっくりかえしたのの4乗)

もしも上下で(㏖/ℓ)の数が同じなら、その時は「単位なし」定数のみ。



それでは用語の説明

・まずは「[A]」この[ ]ってなんだろう?

これは普通は濃度で、(㏖/ℓ)をあらわす。

つまり100mlでも、500mlでも、2ℓでも、すべて1ℓに直して計算しなければ、数値が違ってくる。


・「電離度α」

電離度にはたいていαをつかう。

弱酸などで、αは、「濃度中の電離する割合」(つまり電離しない物があるから。)

電離しないのは、元の濃度をCとして、C(1-α)として計算する。

時には(1-α)≒1(電離度があまりにも低いから。酢酸とか。)として計算できて、計算がとても楽な時がある。


そして注意しておかなければならないが、

電離平衡では、Kは「電離定数」で、αは「電離度」

名前はそっくりだけど違うものである。



[水のイオン積]

水は温度にもよるが大抵

[H⁺]×[OH⁻]=10のマイナス14乗

となる。

 つまり、H⁺の濃度が低ければ低いほどOH⁻の濃度は高くなり、

逆も言える。


だから「pH」ということができる。

「pH」とは、すなわち、pH=㏒[H⁺]

[H⁺]の濃度が小数点以下何桁で計測できる濃度か、ということであり、

一桁ならpH=1 つまり[H⁺]が多い。

12桁なら、pH=12 つまり[H⁺]がすくなくてその分[OH⁻]が多い。


そして、両方が同じなら、つまり両方10のマイナス7乗なら、「pH7」

「中性」という事である。




「緩衝溶液」について

 水酸化ナトリウム+酢酸→酢酸ナトリウム+水

 アンモニア+塩酸→塩化アンモニウム+水


こういう中和の時に、でてくるのが「緩衝溶液」

できた「酢酸ナトリウム」や「塩化アンモニウム」のおかげで、多少の酸や塩基をくわえても、pHが変わらないという特徴を持つ。

 pH=㏒[H⁺]だから、

つまりはH⁺(水素イオン)またはOH⁻(水酸化物イオン)の濃度が変わらないという事になる。

 

 それがどうやって起こるのか?平衡定数を用いて説明すると、


例)水酸化ナトリウム+酢酸→酢酸ナトリウム+水

化学式で書くと、NaOH+CH₃COOH→CH₃COONa+H₂O


このCH₃COONaの入った溶液に酢酸を入れてもpHはあまり変化しない。


酢酸の電離式は

CH₃COOH→CH₃COO⁻+H⁺


「化学の問題は読んだら何でも化学式で書くのが基本。そうすると㏖比も分かるしね。」


平衡を表すと、

[CH₃COOH]  ⇄ [CH₃COO⁻]+[H⁺]


K=

 [CH₃COO⁻]+[H⁺]

――――――――――

[CH₃COOH]


つまりはこれが定数になる。

と、いう事は、[CH₃COO⁻]を増やせば自動的に[H⁺]も減る。

これが緩衝溶液の基本である。


*[CH₃COO⁻]が増えると(つまり水酸化ナトリウムが入ると)、入れた酢酸は電離できずに、全て[CH₃COOH]の形になる。つまりは、[CH₃COOH]=C㏖/ℓ(つまり入れた分だけ分母の濃度にすればOK) 計算が楽、という事になる。


塩の加水分解、共通イオン効果、弱塩基/弱酸遊離の問題もある。

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名階可岳の化学授業(理論) 白居ミク @shiroi_miku

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