06 気まぐれな買い物

写真を撮り終えた私はヒデさんたちと別れ、ショッピングセンターの中へと入っていった。



せっかくの午前中だけの部活で、こんなとこまで来てみたはいいものの、3000円しか財布に入れてない私に買えそうな魅力的なものなどない。

いや、お金がないというよりは、本当に欲しいものがあんまりなかったのだ。


私はずんずんショッピングモールを歩き回り、連絡通路を渡り、別館へと移りまた歩いた。

歩いて歩いて歩いた末、とある店の中へと入っていく。

その店は、フードコートの近くにある下着屋で、過去にも何度かそこで商品を買ったことがある。


なんとなく、久々に見たい気分だったのだ。saleの文字が目に入ったのも魅力的であった。

店内を物色したあと、もっとも気に入ったワンセットを試着することなくレジへ持っていく。

今つけてる下着がきついなら、サイズを上げれば良いだけだ。しかも、アンダーが変わっていないのだから間違いなく上げるべきはカップのサイズであろう。

「お客様、ご試着は宜しいですか?」

「はい」

なるたけ手早く会計を進める。

「ポイントカードお作りしても宜しいですか?」

「あっ、えっと…はいお願いします」

一瞬迷ったのは、次またここで購入する機会を考えたからである。

何度か買ったことがあるから、きっとまた来るだろうと思っていたが、結局それ以降来店しておらず、あれからもう3年経とうとしている。



店を出て、来たときと同じ連絡通路を渡りながら、財布のなかの残額を想う。


いくらセールとはいえ、1000円を一度に使ってしまうと帰りの運賃だけでほとんど小遣いが無くなってしまっていた。

疲れたし、今日はここまでとしよう、自分にそう決意表明をし、わたしはショッピングモールの最寄駅の切符売り場の行列に飛び込んでいった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る