「出落ち小説」とは言いえて妙であるなと。

先日、SF創作論の件で言及した「板野かも」さんのレビュー集「ヒョウロンカキドリの感想ノート」を読ませて頂きました。


カクヨムの全容が未だつかみきれていない小生のような者にとっては、各ジャンルの名作をあれこれと紹介してくれるこのような連載は、とても興味深く。


さて、その中でも気になったのが、板野さんが度々使われている「出落ち小説」という言葉。


「出落ち」とは通常、漫画やお笑いなどで奇抜な格好や設定のキャラクターが出てきたときに、その存在そのものがギャグの落ちとして成立しているような状況をいうのだと思いますが、小説が出落ちとはどういうことか。


そこで、板野さんが出落ち小説として紹介されている、「飯田太朗」さんの「壁尻殺人事件」に目を通してみて、なるほど確かにこれは出落ちだな、と悟りました。


小生の語彙力で表現するのは難しいのですが、着想が出落ちなのに中身が真面目というか、作風が真面目なのにテーマが出落ちというか。


これはなかなか言語で表すのが難しそうな概念ですが、「出落ち小説」と一旦言われてしまうと、確かにその形容がぴったりはまるように思えてきます。


単なる「ギャグ小説」「不条理小説」と呼ばれるものと違って、扱っているテーマは出落ちだけれども、体裁はあくまでちゃんとした小説である、という点が大事なのでしょうね。


ところで、小生がカクヨムを知るきっかけとなった「横浜駅SF」ですが、あれも板野さんに言わせれば「出落ち小説」なのだそうで。


なるほど、「横浜駅が増殖して日本中を覆いつくす」という着想は「出落ち」の名に恥じないものであるし、それでいて中身の文章はひどく硬派というのも、先述の条件を満たしているように思える。


先の投稿で触れた「この勇者が俺TUEEEくせに慎重すぎる」も、いわば出落ち小説の一種なのかもしれません。

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