二つの作品から見えてくるSFの奥深さ

せっかくお二人の作者さんのSF創作講座を読ませていただいたので、その勢いで、同じお二人のSF短編をそれぞれ読んでみました。


「丸山弌」さんの「ゲノム葬列」と、

「板野かも」さんの「電脳歌姫の誕生と消滅」。


奇遇にも、というか、とにかく小生がびっくりしたのは、この二作とも、進歩したAIと人間の仕事の奪い合いを描いた作品であったということ。


いくら、同じようにSF創作論を掲載しているお二人の作品だからといって、ここまで扱うテーマが同じになることがあるのですね。


それだけ、AIの進歩というのは、現在注目されている科学技術の話題だということなのか。


さて、この二作ですが、テーマは同じながら、描かれている世界はまるで間逆。


丸山さんの作品は、自動運転の普及によってバスの運転手が仕事を奪われてしまうという、いうなれば、AIが人間の居場所を奪う話です。


現実に危機感のある話題でもありますし、AIをテーマとする作品と聞いて、多くの人が思い浮かべやすい、オーソドックスな筋書きといえるでしょう。


対して、板野さんの作品は、AIの歌手が進化を続けていくものの、最後は現実のアイドルによって居場所を奪われてしまい、人間に必要とされなくなって消えていくという話。


丸山さんの作品とは逆に、人間がAIから居場所を奪い返した話といえます。(AI歌手の女の子はかわいそうでしたが。)


この二作、真逆のストーリーを描いているからといって、どちらかは正しくないとか、どちらかが劣っているとか、そういうことではない。


AIと人間の仕事の奪い合いという、一つのテーマから、作者によっていくらでも話が作れるのだという、SFの奥深さを象徴しているともいえそうですね。


どちらの作者さんも、人に教えるほどSFに詳しいだけあって、本当にありそうな話だと思わせるリアリティがすごい。


やっぱり小生には難しそうだけど、SFがカクヨムでよく読まれている魅力の一片は、少しわかったような気がします。

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