「慎重勇者」に見る「叩かれない俺TUEEE」の形

「俺TUEEE」が叩かれないパターンというものを先日考えてみたので、その勢いで、書籍化されている異世界ファンタジー作品に目を通してみました。


「土日 月」さんの「この勇者が俺TUEEEくせに慎重すぎる」。


タイトルにもそのものずばり「俺TUEEE」と入っているこの作品ですが、なるほど確かに、あらすじと冒頭から既に伝わってくる「他とは違う」という感触。


読み進めてすぐにわかったのですが、この作品は、勇者が「俺TUEEE」できるほどの実力者であることを、笑いの題材として使っているのですね。


この作品の勇者は確かにチート的な資質の持ち主ですが、更なるチート能力を得るためにしっかり時間をかけて努力をするという特徴もある。


つまり、批判される「俺TUEEE」系作品にありがちな、作者の自己満足だけを投影したようなオナニー感がなく、ちゃんと努力して強くなった勇者を題材に、彼の慎重な性格をイヤミのない笑いに仕立てるという、きわめて高度な計算がなされているように思えます。


こういう作品であれば、どれだけ主人公が強くても問題にはならないのでしょう。


漫画の「ワンパンマン」に少し近い気もしますね。


あれも、強すぎるヒーローを主人公にして、その強さを笑いの題材として使うというのが主軸の作品ですからね。


まとめると、主人公が強すぎることが問題なのではなく、強すぎる強さを単に「強いでしょ、すごいでしょ」という形でしか描写しないオナニーぶりが叩かれているのだと。


主人公の強さを、作品の面白さを構成する要素としてしっかり活かすことができていれば、どれほど「俺TUEEE」でも何ら問題ないということですね。

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