どこにでもありそうではあるけれど

ありふれた感じの総菜屋を舞台にした恋愛劇。舞台設定も配役もよくありそうに見えるけれど、ふとした一言、ふとしたやりとりがリアルで面白かったです。

読む前は、このタイトルでチャレンジするなんて勇気あるなあ、と思っていました。なにしろポテトコロッケはよくある食べ物なので、その小道具に変化をつけるのは難しいんじゃないかと思っていたからです。ですが、この作品ではその舞台に加えて四季の移り変わりという組み合わせがあって、そこがすごくよく書けていました。こういう人たちはこういう四季を感じているんだなあ、と。季節が進むたびに少しずつイケメン君の正体が明らかになっていくのがいいです。あとフラグを叩き折る手が徐々に鈍っていく主人公もかわいい。

面白かっただけじゃなく、どこにでもある舞台を選んでいても、どこにもない物語は書けるんだぞ、という作者のメッセージを感じました。かわいくてかっこいい話だなーと思います。

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