アフィリエイト小説で金稼ぐとか最高じゃん!!

ちびまるフォイ

よくわかる創作才能の失う手順

「うおおお! できた! できたぞ! 最高傑作だ!!」


ついに完成した自信作は異世界ファンタジーとはまったく別の新ジャンル。

『近未来サイバーパンク転生小説』だ。


自分で何度読み返しても面白いと思う。

アニメ化したい。というか映画化したい。


「1ヶ月練りに練ったプロットを作ってよかった!

 これで底辺カクヨム生活から一気に抜け出して書籍化確定だ!!」


さっそく小説を公開した。



★0




「あれ……? おかしいな?」


それから数週間たっても俺の小説はそのままネットの奥底へと追いやられた。




劇終。



失意のどん底で自殺の方法でも探しているとカクヨムに新機能が入ったとあってカムバック。


「アフィリエイト……小説?」


クリックしてもらえると、数円。

読了してもらえると、数円。

応援コメントされると、数十円。

レビューしてもらえると、数百円。


なんと、自分の小説でお金がもらえるという新機能だった。

これはさっそくやってみるしかない。


「つっても、俺の小説なんて誰にも響かないしなぁ……」


過去作を振り返ってもランキングに載るどころか誰かに読まれたことすら怪しい。

そんな底辺小説にアフィリエイト収入が入ったところで意味はない。


「よし、ここはちゃんと研究すべきだな! ビバ・金儲け!」


ランキングの分析を始めると、人気作にはタイトルかキャッチフレーズに人を引き付ける魅力がある。

単に人気の「異世界転生」だけではもはやその他大勢に埋没していしまう。


趣味に「人間観察」とか書いちゃう痛い人間だった悲しい過去もあり、

俺にとって分析というのは得意分野だった。


「できた! よし、いざ投稿だ!」


新作のエッセイ『ようこそカクヨムへ! 今すぐ消えろ!』は大量のアクセスを稼いだ。

それはすなわち、大量のアフィリエイト収入が入るということ。


「すごい! タイトル工夫しただけでこんなに!?」


内容なんてカクヨムの体制を愚痴るだけの、まぁ中身のない小説いうより日記帳。

それでも同調してくれる人や、逆に反対している人。

そんなこんなで盛り上がって大人気小説となった。


「そうか、ネット小説ってのは面白いかどうかよりも、爪痕を残せるかどうかなのか!」


なんとなくコツがわかった気がする。

ガチで小説読みに来てる奴なんていない。そういうのは本を買ってる。


ここに来るのはヒマつぶし感覚できている読書意欲の低い人間なんだ。

そういう人間をターゲットに見据えて投稿すれば……。




\9800

\10,000

\12,225



「うはははは!! やったやった!」


預金通帳にはどんどん数字が加算されて行っている。

先日出した小説も人気になってもう働く意欲すらわいてこないほど。


「しかし、こんな中身のないものでも人気出るなんてなぁ」


今投稿している小説を読み返しても正直面白いとは思えない。

いや、そこまで悪くはないものの、どこかで見たような聞いたようなストーリーを一つの鍋に入れて作り出したような小説。

悪くはないが記憶に残るものでもない。


「ま、いまどきこんなものだろ。音楽も映画も漫画も小説も誰かひとりにヒットするよりも

 嫌われないように、みんなの"好き"にハマるようなものが求められてるんだな」


少し現実を達観して鼻をのばしていた俺だったが、

翌日カクヨムから「アフィリエイト機能」がなくなったので数滴ちびった。



かねてより弊社のサービスをご利用いただきありがとうございます。

このたび「アフィリエイト機能」をカクヨムより撤廃いたしました。

健全な読者と作者とのやり取りを推進するための意図あってのことです。

皆様には突然の対応となったことお詫び申し上げます。



「な、なんだってーー!?」


収入源がこんな突然絶たれてしまうなんて。

いやしかし諦めることではない。

今の俺はアフィリエイト時代に売りに売りまくったユーザー名がある。

売れっ子ネット作家となった今なら何を投稿しても大丈夫。


クリック数を稼ぐためだけに書いていた小説をやめて、

俺は本格的に面白い小説を書いて投稿した。


が。

結果はモザイク処理を施したくなるほど酷評だった。



>つまんね

>タイトル詐欺だわwwww

>読む前が一番たのしかった



これだけ酷評されてやっと自分の今がわかった。


「ああ、なんてことだ……アフィリエイトのために小説書いていたから、

 クリック数や話題性は稼げても中身がぜんぜん伴わない……」


何を書いても、既存の作品の劣化コピーになってしまう。

お金を稼ぐことばかりうまくなった俺は、いつしか自分の創作才能を手放していたことに気付かなかった。


「終わりだ……もう何もかも……」


昔の栄光を求めるように俺は過去作を振り返った。

読んだ瞬間に、思わず眉をひそめた。


「……なんだこれ。タイトルも全然普通だし、キャッチフレーズもいまいち。

 タグもヒットしにくいものだし、投稿時間もめちゃくちゃじゃないか」


まるで、「どうぞ読み捨ててください」と言っているようなものじゃないか。

俺は自分の小説を改良して再度投稿した。



★15448



「すごい! 大ヒットだ!!」


アフィリエイトで培った"人を集める技術"がこんなところで生きるなんて。


評価されないのは小説がつまらないからじゃない。

読まれるような工夫をしてなかったからなんだ。



――そして、今。



「先生、この小説はどうでしょうか?」


「そうだね、もうちょっと展開を早めてみたらどうかな?

 1話から登場人物紹介だと読者も退屈するだろう?」


「なるほど! 先生ありがとうございます!!」


今では俺はカクヨム内のアドバイザーとしてたくさんの作者とつながっている。

報酬? もちろん無償でやっている。


面白い小説が多くの人に読まれることが最大級の報酬だから…。

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