不思議な視点から青年時代の虚しさを説く。

三人称ではない。決してない。
主人公といえば、主人公の立場から書かれた作品ではある。
しかし、話の大部分は吉井くん視点であるようだ。
何と言おうか……そう、主人公が吉井くんと本屋の彼女について婉曲的に語っているといったものだろうか。
こう書くと、普通ではないか、と思うであろうが、いやいや、そんなことはない。
少なくとも私は、とても新鮮でその世界へ吸い込まれていった。電子媒体からただ文を瞳に映しているだけであるはずなのに、私の目の前にはその作品の世界の中が映っているように感じられた。
2000文字ちょっとの話。
しかし、その世界は少し澄んでいて、且つ、青年時代を生きる者たちの心情を水彩絵の具のように透明ではあるが、それは色濃く、読者の胸に残るものだろう。そう、私がそうであった。
良い読了感でありながら、何度か読み返し、その文字一つ一つの意味を考えたい作品だと思う。

素敵な作品を書いていただき、ありがとうございます。良き出会いをしました。

皆さま、是非、ご一読を。