夢浮橋 その二十六

 人知れず会いたいと思っていた姉君だったのに、その姿も見ないままに終わったのが頼りなくて残念で、不満な心を抱いたまま帰ってきた。


 まだかまだかと薫の大将は小君の帰りを待っていたのに、こんな要領を得ないままで帰ってきたので面白くない気持ちになり、なまじ手紙など持たせてやらねばよかったとあれこれ気をまわして女君を誰か男が隠し住まわせているのかとあらゆる想像をめぐらせ、自分がかつて宇治に女君を囲い心にもかけない状態で見捨てていた経験からそう考えたとか。そう本には書いてあるようだった。




                  了

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ライトノベル風『源氏物語』 前田薫八 @maeda_kaoru

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