祖母の真っ赤な肩掛けが雪景色の駅舎に映える。彼女は待ち続けた。

だんだんと物事がわからなくなった祖母は、今日も駅に立った。
最期が近付いてもなお、祖父を乗せた列車の訪れを待った。

「私」の目を通して、白く雪深い北陸の情景が
しっとりと静かで美しい筆致で描かれる。
祖母の生きた古い時間へと思いを馳せると、
やがて「私」の前に、鮮やかな幻が現れる。

ここで多くは語るまい。
話の筋書きはシンプルで、文章そのものを観賞する、
そんな性質の小説だ。
筆者の純文学短編は、いずれもどこか寂しげで儚い。

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