Garnishing trumps hate

Garnishing trumps hate

男が社長になって二年が経った。


寿司業界史上最低の支持率で幕を開けた男の経営は、何もかもが常軌を逸していた。

光り物至上主義者で要職を固め、任期中のチラシ業者に公の場での税抜き表示を強要している。

あの悲劇的な就任会見を覚えているだろうか。

壇上で叫び続ける姿に指導者の風格はなく、無茶な納期を可能だと強弁する一ビジネスマンそのものだった。


「今日、この日から、寿司第一のみになります。寿司第一です」

「私たちは寿司を再び強くします」


チラシ業者は会見で「当日の売上は百五十万くらいはあった」と明らかな虚偽を述べたが、スシントン・ポストを始めとする各報道機関の数字を照合した結果、実際は二十五万程度だったと結論された。

これに対し、当時のチラシ業者は「オルタナティブ・ファクト」と言葉を濁した。


しかし、現実は男の言う通りに変化した。就任から二年、寿司屋の売上は青天井に上昇を続けている。

光り物の特需が他の寿司ネタを駆逐したことを除けば、その経営手腕は相当なものなのだろう。


男の経営方針の下、ハンバーグを始めとする少数民族、かっぱ巻きのような先住民族、カリフォルニア・ロールといったチャレンジドは徹底的に弾圧された。

お品書きから排除された彼らは料理の壁を超えて反寿司第一主義の声を上げている。


そのあまりにも行き過ぎた寿司第一主義により、昵懇の同盟関係を結んでいたうどんが愛想を尽かし回る寿司屋の注文画面から姿を消したのは今年に入ってからのことである。

中華料理への影響力を担保するため支配下においていた他の日本料理も、うどんと同じ道を決断する日はそう遠くない。


多様性を否定し光り物のみが認められる非情な寿司屋を打ち破る力はいつでも、私達ツマにある。ツマは食材融和の象徴なのだから。


寿司第一主義を掲げた男の任期はあと六年残っている。嵐が過ぎ去るのを沈黙の中で耐えるつもりはない。

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