事故死、後、転生した彼は、その後の人生で何を得たのだろうか。

本作を読んでいると泣きたくなってくる。
生まれ変わりという奇跡のもとに構成された作品だが、その奇跡によって日常のあらゆる尊いものが明るみに出されているからだ。

タクヤはダンプカーにはねられて死ぬが、その死ぬ日までの出来事が追われるにおいては、その日に向かってのカウントダウンがされる。
明日死ぬと思って今日を過ごせという自己啓発のよくある警句があるが、そんなことは不可能だ。仮定と事実では決定的に異なる。
決定された死を横に置くとき、何の変哲もない日常のかけがえの無さ、当然と思っていた家族の存在の嬉しさが突き刺すようにこみあげる。
喪失の悲しみは、誕生の喜びと伴走している。

一応、作品の眼目としては、転生したタクヤが、彼女だったミキと15年の差を超えてもう一度関係を取り戻せるかということになっており、それも重要でないことはないのだが、ひとまずは読者には、異化されたこの日常を愛してほしいと思う。
最後にどういうことになろうとも、彼らが生きた証は私たちが知っているのである。

(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=村上裕一)

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