「丹布 士紅」とは何者なのか?「モルヤン」を舞台に描かれるSF青春活劇

本作が「全国制覇を目指す庭球部員達の活躍を描いた青春活劇」だけでは終わらない魅力に溢れているのは、物語の舞台が「現代」ではなく「モルヤン」だからであろう。

それでは、「モルヤン」とはいかなる世界なのか? ……それを読み解くこともまた、本作の大きな楽しみであることは間違いない。

まずは騙されたと思って、本編を読み始めて頂きたい。
謎めいた「序章」から一転、学園モノの様相を呈する「第一の幕」からは次々とキャラクターや用語が登場するので、面食らってしまうかもれしれないが、そこからさらに読み進めることで、本作が描き出そうとしている壮大な世界……その一端に触れることができるであろう。

その全てを一度に理解する必要はなく、本作は何度も読み返すことで面白さが増していくタイプの物語だろうと思う。

私も一読しただけではキャラクターの相関関係などを掴みきることができなかったのだが、それらを確認しながら読み返すことで、より深く本作を楽しむことができたと思うし、もう一度読み返したくなるという時点で、本作にハマってしまったと言わざるを得ない。

そのため、本作が真に完結した暁には、いかなる世界が描かれるのかと大変興味が沸いており、ぜひ最後まで見届けたいという思いになった。

そして、本作最大の魅力は「丹布 士紅」という存在だろう。

「第一の幕」でその正体は明らかになるものの、その目的や出自などまだまだ興味は尽きない。

また、「全国制覇を目指す庭球部員達の活躍を描いた青春活劇」の部分に関しても、少年達の友情も含めて楽しむことができたので、今後の展開にも期待したいところだ。

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