タイトルで油断すれば、揺さぶられる感情の嵐に翻弄され続ける事になる!

最初に読み始めた時の気持ちを正直に言うと、
『甘い甘い展開のイチャラブ発展系かな?』というものだった。
しかし読み進めるうちに違和感が膨らみ、これは『まんまと作者様の術中にはまった。ぬかったわ』と悟りました。

このレビューを書くにあたっては、まず表題から紐解いていかねばならない。
『池崎さん! もふもふしてもいいですか?』
さて皆様はこのタイトルから何をご想像されるだろうか。

①池崎さんという名前のケモノ?
②要するにモフリストの話?
③逆だよモフラレストの話だよ。

こんな感じだと思う。
しかしそんなヌルイ話では無かった。
表題にしても読了した今なら、意味が解る。
これは安直につけたタイトルではない。メタファーだと。

次に物語の内容なのだが、これが実に綺麗に構成されている。
中身には触れないが、エピソードタイトルから解るようにこの物語は2つのパートから構成されている。
厳密に言えば3つだが、ここでは2つとして書いていく。

あるfantasy的なスパイスを加える事により、見事なまでの調和が、この2パートでとれている。
時系列で言えばほぼ同時に進行するこれらのパートは、意味なく分けられたものではなく読者を掌の上で転がすために敢えてそう構成された、いわば『考え抜かれたスタイル』だ。

ラストまでの確定した道のりだけを辿るのでは、物語は全く面白くない。そこに行き着くまでにどれだけ面白味を肉付け出来るかによって物語の価値は変わるのだと私は思う。

本作は秀逸という言葉さえ陳腐に思える程にその肉付けが上手くなされており、読み手はまず例外なくこの煙幕に巻かれる事だろう。

そして作中にさり気なく登場させた言葉を比喩としつつ、細かい伏線までも回収しながらラストへと収束する様は、まるでジェームズ・L・ブルックスの映画を彷彿とさせる鮮やかさだった。

少し堅い事を書きすぎたので最後はライトな感じでしめたいと思う。

『少しビターな大人の恋を、もふもふしてみませんか?』

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