火災の現場で仲間をうしなって失意のそこにある現代の消防士が、濡れ衣をきせられて処刑された江戸時代の歌姫の幽霊と運命にみちびかれて出会い、気持ちをかよわせ、はるか昔から東京で大火災を引きおこしてきた火の神とたたかう過程が、迫力のある火災の現場や、大切な人たちをおもうふたりの気持ちの描写とともにつづられていました。
大切な人たちをうしない、うらまれながらも、長きにわたって人しれず東京を守りつづけてきた健気なシオンさんや、誰も死なせないというつよい信念をもつ清志郎さん、彼のよき理解者でもあり恩以上のものをかんじている綾音さんといった魅力的な登場人物たちが、火の神という強大な敵や、立ちはだかる過酷な運命にいどむ姿は、感動的で胸があつくなります。
消防士という男たちの命をかけた戦いからはじまり、熱い物語かと思っていましたが、時空をこえてやってきた歌姫、シオンがカワイイ。
物語が進むにつれて、どんどん可愛くなるので、清志郎とのシオンの距離感がとても良かったです。(でも、わたしは綾音が好きです)
物語の中には様々な歌が出てきますが、第41話で、「ロード・オブ・ザ・リング」のテーマソング「May It Be」が出てくれて、映画もエンヤも大好きなので嬉しかったです。
物語の場面が頭に浮かぶような文章力と、生き生きとした個性があるキャラクターたちが相まって、心から楽しめる物語でした。
ありがとうございます。
消防士と江戸の歌姫という、異色のバディで世界の危機に挑む現代ファンタジー。
作品を読んでまず驚くのが主人公たちの設定ですが、本作の魅力はそれだけではありません。物語のスケール感や手に汗握るストーリー、登場人物の心理描写、スリリングで臨場感溢れるアクションシーンなど、どれを取ってもとても完成度が高い作品です。
また、主人公たちやサブヒロインだけでなく、他の登場人物たちも魅力的で、困難に直面してもくじけることなく、力を合わせて立ち向かう熱い展開に片時も目が離せませんでした。
誰にでもお勧めできる素晴らしいエンタメ作品ですので、未読の方はぜひ読んでみてください。
アクション、恋愛、歴史、ファンタジー、そしてヒューマンドラマ。この作品は、全てが詰まっています。
時には、唾を飲むほどハラハラドキドキしながら読み、時には心が震え、涙が出るような流れになり、そして時にはほっこり安らぐ展開にもなります。
ストーリー展開が計算されていて、読み手を飽きさせません。
序盤から最後まで、まるでひとつの映画を観ているようでした。
随所にエピソードが差し込まれることで、物語の厚みが増し、強弱がつき、単調なストーリーにならないようになっています。
そして、これほどまでのテーマを読者に伝える作者の圧倒的な技量。驚きました!
これは間違いなく一級エンターテイメント作品だと思います。
オススメです。
まず、序盤の迫力ある描写に圧倒され、そのまま一気に作品の魅力と熱量に飲み込まれていきます。
幾層にも重なる設定や物語がありながらも、それらが太い一本の糸の様に綺麗に縒り合されているので、読んでいる間中迷いや混乱は一切なく、すっと作品世界の中に入り込めます。
主人公の清志郎と歌姫のシオン、二人の背景と出会いを軸に、時を超えて運命が動き、歴史を変える。硬派で重厚なテーマなのに、時折挟まれるエピソードにくすりと笑ったり、どきどきしたり。
この作品の内容に関する素晴らしさにつきましては、他の方のレビューの様に表現する術を、残念ながら私は持っていません。
ですが、一度読み始めたら、この作品の魅力に取りつかれる事、そして最後まで読み終えた後に深い感動と満足感が得られ、いつまでも心に残る事だけは断言出来ます。
この作品の素晴らしさを、是非多くの方と共有したい。そう願っております。
特別消防部隊『カズワリー・フライト』を率いる渡 清志郎。ある火災現場で常識では考えられない惨事に巻き込まれることから、この物語は幕を開ける……
リアリティ溢れる筆致、魅力いっぱいの登場人物によって描かれる現代ファンタジードラマです。
なんといっても一番の読みどころは、“ 戦い ” です。単なる善悪の戦いだけではなく、喪失感、憤り、信頼、勇気、博愛などの感情が螺旋を描くように読み手の心を揺さぶります。回を追うごとに、この物語にのめり込んでいきます。読み手の喜怒哀楽、すべての感情を総動員させる特級のエンターテイメント小説、と申し上げても決して過言ではないでしょう。
ヒロインであるシオン。彼女の崇高なる想いに胸を高ぶらせ、共にこの物語にどっぷりと浸ってみてください。
消防という、どちらかと言えばあまり華々しく取り上げられることの少ない分野。警察や自衛隊に比べると、一歩後ろで控えている感がある組織に焦点を当て、それに神話や時代物を丁寧に織り交ぜることによって誕生した今作。読み手を選ばない、最高傑作であると確信いたします。
エピローグ、これは楽しみにしてください。最後の最後で、きっちりと締めくくってくれております。
細部まで手が行き届き、見事に構成され、臨場感にも溢れ、キャラクターも生き生きとした、魅力たっぷりの作品です。
何より素晴らしいのが、設定、描写、そして構成が、細部まで行き届いていること。
物語に一つの大きな柱はあるものの、それを取り巻く人々がそれぞれに持つ背景までしっかりと作り込まれています。
様々なキャラクター(特に主要キャラクター3人)の持つ視点を織り交ぜつつ柱となる物語が展開されますが、それぞれの行動、選択にきちんと伏線が敷かれていてブレがないのです。
これはたいへん素晴らしいことだと思います。
また、舞台設定も見事で、現代では特別消防部隊『カズワリー・フライト』についてや消防についての知識、建物の内部など、本当に細かなところまでしっかりと描かれていますし、過去の時代考証もよくなされています。
火災現場を題材にした消防士のお話であり、幽霊が登場し、伝記の要素もあり、時代物の要素もあり、アクションスペクタクルさながらのシーンもあり、タイムトラベルがあり...これだけ複雑な小説世界を無理なく構成しているというのも驚きです。
あまりに自然に展開されるので、ぼんやり読んでいると非常にややこしい構造であることを忘れてしまいます。
さらに、臨場感もハンパではありません。
特に、序盤の火災のシーンは圧巻で、それだけでがっちりと読者をつかむ力を持っています。
キャラクターも可愛らしく、健気に、そして生き生きと描かれていて、誰もに好感を持てます。
ここまで隙のない作品は少ないと思います。
読めて楽しかったですし、勉強にもなりました。
文字数ほどの長さは全く感じませんので、皆さんにおすすめしたい作品です。