すべてにおいて細部まで行き届いた傑作

細部まで手が行き届き、見事に構成され、臨場感にも溢れ、キャラクターも生き生きとした、魅力たっぷりの作品です。

何より素晴らしいのが、設定、描写、そして構成が、細部まで行き届いていること。
物語に一つの大きな柱はあるものの、それを取り巻く人々がそれぞれに持つ背景までしっかりと作り込まれています。
様々なキャラクター(特に主要キャラクター3人)の持つ視点を織り交ぜつつ柱となる物語が展開されますが、それぞれの行動、選択にきちんと伏線が敷かれていてブレがないのです。
これはたいへん素晴らしいことだと思います。

また、舞台設定も見事で、現代では特別消防部隊『カズワリー・フライト』についてや消防についての知識、建物の内部など、本当に細かなところまでしっかりと描かれていますし、過去の時代考証もよくなされています。

火災現場を題材にした消防士のお話であり、幽霊が登場し、伝記の要素もあり、時代物の要素もあり、アクションスペクタクルさながらのシーンもあり、タイムトラベルがあり...これだけ複雑な小説世界を無理なく構成しているというのも驚きです。
あまりに自然に展開されるので、ぼんやり読んでいると非常にややこしい構造であることを忘れてしまいます。

さらに、臨場感もハンパではありません。
特に、序盤の火災のシーンは圧巻で、それだけでがっちりと読者をつかむ力を持っています。

キャラクターも可愛らしく、健気に、そして生き生きと描かれていて、誰もに好感を持てます。

ここまで隙のない作品は少ないと思います。
読めて楽しかったですし、勉強にもなりました。
文字数ほどの長さは全く感じませんので、皆さんにおすすめしたい作品です。

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