第6話「変態たちとの遭遇」
第6話「変態たちとの遭遇」
私がこちらの世界に来て、一週間が経った。
私の主な仕事は、洗濯、掃除、料理の手伝いなどの雑務が中心となっている。
元の世界ではろくに家事などしていなかったが、やると慣れていくものだ。
しかし、平穏かつ安定した日常をおくっていても、不満に感じることもある。
それは ーーーーーーー
「性的に…不満だな……」
いくら私が女々しいとはいえ、性的欲求が無いわけではない。
ここ一週間は異世界に来るというとんでもないことがあったので、処理する暇が無かった。
この13支部には魅力的な女性たちがいるが、やはりそれとこれとはまた別だし…
それにしてもここの女性は警戒心が薄い気がする、私が選択をやると申し出た時も自身の下着が悪用されるのではと危惧するそぶりも見せなかった。
まあ悪用しないけど。
しかし…なんというか、同性の友人が欲しいな……
卑猥な話を一緒にできるような…
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ーーーーーーー
「休暇…ですか……」
「おう!お前働いてばっかりだったからな!うちが完全週休2日だって言い忘れてたぜ〜♪」
ライツが酒らしきものの入ったコップを片手にほろ酔い顔をしながら告げる。
「明日と明後日は自由に遊べ〜♪」
「…ありがとうございます」
簡単に言ってくれる。右も左も分からない世界に飛ばされて、自由に遊ぶなんてことそう簡単にできはしない。
ここの娯楽もよくわかっていないというのに。
皿を洗いながらあれこれと考える。
(しかし…)
休暇というのは有難い。折角だから明日は街の方をぶらぶらと歩いてみよう。
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ーー
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「さてと……」
翌日、私は町中をあてもなく彷徨っていた。
金がないから何も変えないのだが、見ているだけで心が踊る。
できることなら同年代の同性の友人を作りたいが、この世界のこの国では17歳ごろの男子というのはどこで何をしているのだろう。
軍はあるが、徴兵はあるのか?それとも学校が……
そんなことを考えながら歩いていると、眼鏡をかけた青年とすれ違った。
彼は間違いなく私と同じ年頃だった、確信を持って言える。根拠はないが。
(友達になれるだろうか…)
そんなことを考えながら、つい彼の後をつけて行ってしまった。
普段の私ならこんな真似はしないが、寂しさが募りすぎていたのかもしれない。
眼鏡の彼は人ごみをかき分けながらどんどんと進んでいく、私もそれに続く。
人も少なくなってきたころ、彼は周囲を少し見渡したのち突然しゃがみ、家と家の間の隙間を進みだした。
(なんと…)
彼の真意はわからないが、どうやらここが別の場所に繋がっているようだ。
(どうする…?)
普段の私なら間違いなくそこで引き返すだろう。
ただ何度も言うように私は同年代の同性と話がしてみたかった。
「んん…ぐ…ぅ……」
だから私は彼を追うことにした。かなり狭いが、小柄なお陰でどうにか進める。
「だから…それは……」「全く…お前は大体……」
何を言ってるのかは聞き取れないが、前の方から複数人の話し声が聞こえて来る。
「……っはぁ!」
ようやくひらけた場所に出た。そこは周囲を家の壁やら木々やで囲まれた小さな空き地のような場所だった。
3人ほどの青年が、目を丸くしてこちらを見ている。
1人は、私が元いた世界の、元いた国の学校のイケメンといったような男。
もう1人はアメリカのハイスクールにいそうなやつ。
もう1人は先ほどすれ違った眼鏡をかけた、爽やかな雰囲気のやつだった。
(しまった……!)
考えが回らなかった!男子複数人で話をしているということは、ここはおそらく彼らにとって秘密基地のようなものかもしれない。
そんな場所に部外者が来ることなど本来ありえない…
友好的に帰してくれればいいが、3対1でリンチにでもなったら非力な私では到底太刀打ちできそうにない…!
「あっ…すいません道に迷っちゃって……」
もはや友達を作るとか言っている場合ではない、怪我をする前に帰らなくては。
「どうする…?」「いやしかしここを知られたからには…」「待て、ここはひとまず…」
私の弁明に聞く耳を持たず、3人の男たちはヒソヒソと話している。
一通り話がついたのか、日本の高校生っぽいイケメンが私に向き直り口を開いた。
「あーっ…えーっと、1つ聞きたいんだが、君、俺らの仲間になる気はないか?」
予想外の展開だ。
仲間に入れてもらえるのは有難いが、しかしどんな集団なのか聞いておかなくては。
非正規とはいえ私も軍の人間、犯罪行為の片棒は担げない。
「えっと…どんな集団なんですか?」
「我々は…【肉欲の壺】だ。」
(………?)
聞き違いか?今肉欲の壺と聞こえたような…
「男同士で集まって、それぞれの性癖について議論を交わす集まりだ。」
(聞き違いじゃなかった…!)
なんてことだ…まさかそんな集団だったとは……
いや面白そうだけど。
「俺はリーダーのマフィン、腐男子だ。」
(なるほど…なかなか濃い集団かもしれない。)
「俺はロビラル、“スケルトン”のあだ名で呼ばれている。《未来予知》の魔力が使える。」
私が先ほど後をつけた眼鏡をかけたスタイリッシュな男が自己紹介をしだす。
(こっちはまともかもしれないな…)
「恋愛対象は12歳以下の女性全般だ。」
(前言撤回、重度の変態のようだ。)
「俺はケビン、好きなのはおっぱいだ。超乳が特に好きだ。よろしくな。」
最後はアメリカ風の男だ。この中ではまともな方かもしれない。
「で、だ……お前の名前と性癖を聞きたい。」
リーダーを名乗るマフィンが私の目を見ながら告げる。
他の2人の視線も私に注がれている。
おそらくこの流れだと正直に性癖を暴露した方が良さそうだ、そんな異常性壁でもないしな。
「私は滝山、好きなのは…『人外っ娘』だ。」
言い終えると、3人が一気に肩を落とし、言い争いを始めた。
「おいどうするんだよ!また変態が増えたじゃねーか!」
「お前だって賛成してただろ!自分の性癖の賛成者かもしれないって!」
「なんでこうアブノーマルな奴ばかり集まるんだ!」
醜い言い争いだ…いやしかし聞き捨てられないことがあった。
「待ってくれ!私のどこが異常性壁だと言うんだ!人外好きなんてノーマルだろう!?」
「……じゃあ聞くが、お前はどんな娘やシチュが好きなんだ。」
マフィンが呆れたような目つきで言う。
「どんなのって…猫耳女子とイチャラブしたり、狼少女に襲われたり、蛇と人のハーフに丸呑みにされたりみたいな……」
「「「充分異常だよ!」」」「なんだと!」
「いい加減にしろ変態ども!何故幼女の魅力がわからないんだ!目を覚ませ!」
「いい加減にするのはお前の方だ!性犯罪者予備軍は黙ってろ!」
「大事なのはデカいおっぱいだろうが!それが無くていいとでも思っているのか!?」
「お前が好きになる理由はおっぱいだけなのか!?他にもあるだろ!」
「おっぱいがあればいい」
「人外娘が最高だろうが!圧倒的強者娘に蹂躙されるのを想像すると興奮するだろ!?」
「「「お前だけだそんなのは!!」」
「おいお前ら!もっとくっつけ!そしてキスしろ!!」
「ふざけんな!」「お前は黙れ!」
男同士の醜い罵り合いは、5時間ほど続いた……
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「結局、今日も決着はつかなかったな…」
マフィンがため息まじりに頭を抱える。
「しかしタキヤマはなかなか骨がある。新しい仲間を手に入れただけでも、今日の会議は意味があったと言えるだろうな。」
ロビラル、通称スケルトンが眼鏡を指で押し上げる。
その風貌は極めてカッコいいがロリコンでは台無しだ。
「ひとまず、歓迎しようじゃないか。」
ケビンが言いながら私に手を伸ばす。
「これからよろしく。絶対に巨乳好きにしてやる。」
「こちらこそよろしく。絶対に人外でないとイケなくさせる。」
その後残りの2人とも握手を済ませる。
「そうだ、タキヤマはスマホ持ってるのか?」
「ん…いや、持ってない。遠いとこから来たばかりなんだ。」
(なんだと…この世界にはスマホがあるのか?魔法が存在しているのに…?)
やはりこの国はまだまだ私が知らないことだらけだ、早急に調べる必要がありそうだ。
「そうか、これが俺の連絡先だ。買ったら連絡くれ、残りの2人はその時俺が送る」
言いながら、色々と書かれた小さな紙を手渡された。
「わかった、ありがとう。」
(ん……?)
今、何かマフィンから違和感を感じた。
この匂いは……
「なあ、マフィンって…もしかして…」
「なんだ?どうかしたか?」
(いや……今聞くべきではないだろう)
「なんでもない、勘違いだった。」
「おお?そうか。」
「じゃ、今日の性癖会議はこれで終わり!解散!」
「じゃあな」
「またな〜」
「楽しかった、じゃあねー」
3人と別れて家路につく。あの狭い家と家の間以外にも通路があったのでそちらを通る。
(ああ…実に良い時間を過ごした………)
日が暮れていた、夕焼けが実に美しい。
(しかし……)
あの時感じた違和感。
マフィンから漂う僅かな香り…あれは確かに女子のものだった……
気色悪がられるし、人の秘密を暴く趣味もないから言わなかったが。
(男装している?もしくは魔力?)
(いったい何故?正体でも隠しているのか?)
「………まあいいか。」
細かいことは気にしないことにして、足を早める。
帰る家があるとは良いものだ。
明日も、良い日になるといいな…!
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ーーーーー
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ーー
ー
「ふぅ...今日は色々と予想外だったな......」
『肉欲の壺』リーダーのマフィンは、自室で服を着替えていた。
彼がTシャツとGパンを脱ぐにつれ、体が徐々に変化していく。
短く揃えられた髪は徐々に伸びていき、肩まで到達したところで止まった。
股の生殖機が大きさを縮めていき、完全に消失した後、また別の状態へと変わる。
喉仏が無くなり、胸に脂肪の双丘ができる。
「あー...あー... ゴホン」
「バレちゃったかな...私が女の子だって。」
彼女は王国第三王女 シフォン・ルクサンドラ。
《変身/メタモルフォーゼ》の魔力を持つ。
「タキヤマ...くん......彼は多分受けね。」
腐女子であった。
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