のっけからかっ飛ばすラブコメです。
天然美少女、アホの子、マゾッホの眷属……。
それぞれタイプの違うヒロインに振り回されながら話は進んでいきます。
前半はひたすらヒロインがかわいい。
これだけで頁をめくる手が止まりません。
が。
本作はラブがコメするだけにはあらず。
時折語られるヒロインの背景や、主人公たちにまつわる歴史の話も練り込まれています。
随所で挿入されるキーワードも過不足なく、ぐいぐい読者を牽引します。
これらは決して仰々しく語られないにも関わらず、後半の鍵として鮮やかに機能するのです。
そして後半、怒涛の急展開。
ベタ甘な日常は終わりを告げ事態は一気にシリアスに。
練られた設定が緊迫感を煽り、前半との落差も相まって気が抜けなくなります。
牙を剥いた宿敵とヒロインに待ち受ける悲壮な運命。
そして主人公との別れ。
10話、涙を流しながらも懸命に笑顔をつくるヒロインが切なすぎて辛かったです。
前半のラブコメもシリアスな設定も、全てはこのシーンを描くために用意されているはず。
話のテンポや文体も読みやすく、気が付いたらのめり込むこと必至。
主人公も気持ちのいい少年で、後半は心の底から応援していました。
ジャンルも学園、伝奇、ちょっぴり異世界といいとこどり。
「泣き」にもラブコメにも手を抜かない全力投球スタイル。
ベタ甘だけでは物足りない読者にぜひ!
それと、タイトルが最高に冴えてます!
主人公は高校生の物部(もののべの)伊羅将(いらはた)。
タイピングに単語登録が必要そうな少年は、街中で
『ネコの裁きは近いかも』
などの奇妙なポスターを見かけます。
怪しむ間もなく、手助けしてほしいと迫る美少女花音(かのん)。
彼女のいう『エッチなご褒美』目当てでポスター貼りを手伝うことになる。それが騒動の始まりでした。
下駄箱に支離滅裂な文面のラブレターを入れて交際を迫る少女リン。
花音の妹で12歳で丁寧な口調ながらアダルトグッズを多数持参する変態処女陽芽(ひなめ)。
伊羅将が子供のころから肌身離さずつけている、古来のアクセサリー根付(ねつけ)。
その秘密が明かされるとき、もう一人の美少女が登場。その正体、主人公に近づく目的は?
それぞれ個性的で魅力的な美少女たちが、主人公に好意をもって近づいてきます。
フラグを立ててから、主人公は無事回収できるのか。
権力を笠に着て、卑劣な振る舞いで全校生徒から目の敵にされている少年サミエル(漢字でどう書くかは本編をご覧ください)。
彼は花音の15歳の誕生日に彼女と婚約する契約に。
そこに隠された陰謀、それに彼女たちの正体が明らかになります。
本来相争うはずの少女たち、それに昔からの因縁がうまく絡み合い、読み応えがありつつも、一話ずつの分量が考慮されているので先が気になる構成になっています。
はたして主人公はサミエルの陰謀を阻止して、彼女たちの笑顔を取り戻せるのか。
そしてポスターに込められた真の願いは。
和ものでファンタジックなラブコメ、開幕です。
謎の配置が絶妙です。物語における重要なキーワードの情報開示が寸止めされていて、読者のもどかしい気持ちをカモフラージュするかのように勢いのあるキャラクターたちがシナリオを進めていくため、ページをスクロールする手が止まらなくなります。
上記は、まるでミステリーの書評みたいですが、あくまでラブコメがメインです。可愛くてけなげなヒロインが、読者の庇護欲を刺激してくれます。脇を固めるサブヒロインたちも一癖も二癖もあって、ついつい目移りしてしまうでしょう。
そんな魅力的なヒロインたちを危機に陥れる敵がいます。とても憎らしいやつで、主人公が敵に対して抱く怒りの感情は、きっとあなたの心に火をつけるでしょう。
物語のテーマ上、シナリオが進行していくほどビターな展開になっていきますが、必ずや納得のいく結末を用意してくれるはずですよ。
思わず伏せ字でキャッチをつけましたが、
ともかくテンポが良く、またまた女子がどの子も可愛らしいという
ラブコメの根っこをしっかりと押さえたからこその愛らしさ。
このヒロインたちに振り回される主人公をニヤニヤみていたら
「ええっ!」とのデカイスケールになって来ました。
ほんのきっかけが大きな展開になるがコメディで、テンポに支えられて物語もしっかりと、でもリズミカルに動いて行きます。
わたしは花音ちゃんが可愛くてニヤニヤしながら先を読んでおります。
キャラへの愛がいっぱい溢れた本作。
ラブコメっていいなぁ、と改めて思える傑作ですよ。いかかですか?
作者さまのネーミングに脱帽です。うん、面白い!!!