いや、これは面白かったです。
ベトナム戦争の映画やガンダム、ゲームのガンパレードマーチを思い出しました。少年たちが戦い、時に死を迎える中、何を考えるのかという描写が秀逸でした。特に、ただ夜に生まれただけでなぜ差別を受けるんだ、という設定は、多くの戦争映画で見られる人種差別や、今の日本の正社員と派遣社員の問題をより若い世代にも感じさせられる作りだなと思いました。
この手の設定は火の鳥太陽編などでも見られますが、こうしたタイプの話を現代ラノベ的なキャラを入れる事でうまいことリメイクしていると思います。そしてこうしたテーマはともすると左翼的な話に思われがちですが、人が人として尊重されるべきだという基本的な信念をベースとしていて思想的な偏りを感じさせず、さらに後半は爽快なアクションとしての側面もありました。ラストのあっと驚く展開も見事でした。
そして最後に。
タイトルが素晴らしいです。
私はタイトルは短いほど良いと思っているのですが、短すぎると作品の本質はなかなか伝えられない。そこでどうしても尻込みしてしまう。作品のややダークなイメージを二文字で叩きつけてきたこの度胸は特に絶讃したいです。
隙のない名作です。これはヒットするのではないでしょうか。
「昼」と「夜」。太陽が昇ってから沈み、沈んでからまた昇るまでの時間。これだけで、住む場所も階級も、そして戦いも強いられてしまう世界の中で、懸命に生きるため仲間たちと共に奮闘し続けていた主人公。しかし、何の疑問も抱いていなかった日々は、突然現れた不思議な少女によって崩れ去り始めて……!
少女の記憶、謎の宗教、そして世界の真相……提示されていく様々なキーワードが絡み合う中、やがて物語は幾多もの「昼」も「夜」を抱えた途轍もない真相へと発展していきます。過酷な差別、偏見などのディストピアのような物語ですが、それを彩るのは様々な個性豊か……と言うより、一癖も二癖もありすぎる仲間たち。
果たして、主人公は真っ赤に燃える太陽の光の暖かさを感じる事が出来るのか……壮大なスケールと重厚なストーリーで彩られた、傑作長編です。