師走も押し迫ってくると、街角で肩を寄せ合うアベックの姿が目に付きます。初老のサラリーマンは肩を窄めて家路を急ぐのみです。
本作品は昨年のクリスマスに合わせて投稿されていますが、1年が経ち、"時価"としか書けない旬の物語に熟成しました。是非ご賞味あれ。
料理長の解説代わりに、過去のレビューの一読を勧めます。
織田さんのレビューに、へぇ〜と感嘆しました。そこまで見抜ける読者は殆どいない。
つくねさん。私も牛女が好きです。初老の男が呟くと、タダの変態オヤジですが…。
短編にはMAX2つが信条なんですが、世間の浮かれ気分に当てられ、星3つにしました。
最後に。作者の歴史小説「影は光」は面白いです。他は未読なので何とも言えません。
大正浪漫のささやかな恋愛譚。
兄妹さながらに過ごしていた男女が家の取り決めで許嫁となり、そのむずがゆい心情を可愛らしくも丹念な筆致で書き切っています。
甘えん坊だけど大人の女性として独り立ちしたい女の子の気持ちが可愛かったです。
また、当時の女性の下着事情(ブラジャー)についても執拗な取材に基づいた描写が成されており、あっヘンタ……いや精確性を重んじる作者のこだわりを感じました。
そもそも、大正時代にクリスマスは浸透していたのか? という根本の疑問からして、徹底した下調べによる描写があり、当時の日本人の生活様式や貞操観念なども書き込まれているのが圧巻です。
精緻きわまりない取材力が下地にあるからこそ、安心して読めました。
1話に1万7000字をぶっこんでいるため、人によっては敬遠するかも知れませんが、ブラバしたらもったいないですよ!
女子の生き方はお家や男性次第、恋愛をする方が異質、貧乳が文字通りステータス……価値観が21世紀とは全く異なる、20世紀前半の華やかな大正時代。それでも、誰かを想い続ける純真さやずっと共にいる人を大事に感じる心、そして良き仲間を応援する友情は、どんな時でも変わらないものかもしれません。そして、それは明治末期以降日本でも本格化したと言う、12月最大のイベントも。
尊敬の心が恋心へと変わる中、その思いに振り回されつつも一途に頑張る主人公が迎えた結末は、きっとこの時代でも良い子の元にやってくる、サンタクロースの素敵なプレゼントだったのかもしれません。
大正時代の風習や考えの分かりやすい解説も楽しい、クリスマスを暖かく彩る素敵な恋愛作品です。