ワタシと卵と名付け親

トウモロコシは今日も美味い。


名付け親が持ってきた穀物の中から、トウモロコシを選んで真っ先につつき、食べる。

先日、ワタシの食事を分けてやっている雀たちから噂を聞いた。ワタシと同種の鶏が、狭い入れ物に入れられて毎日ニンゲンに卵を盗られている、と。現場を見たことがないので本当かは分からない。

鶏も大変ねぇ。卵は盗られるし、狭い入れ物に入れられるし、空を飛ぶこともできないんでしょ?

雀たちは穀物をつつきながら、だらだらと喋り続けていた。

ワタシからしたら、雀たちの方が大変そうに見えるのだが。こまめに卵の世話をしなければいけないのだろうし、ワタシのような雨風防げる小屋は持っていないのだろうし、空を飛んだら寒そうである。

なにより、あれほど美味いトウモロコシを毎日腹いっぱい食べられないのだ(ワタシの食事からは、トウモロコシ以外の穀物を分けてやっている)。

「コッコ、今日も卵をもらうね。ごめんね、ありがとう」

食事を持ってきたワタシの名付け親が、ワタシから生まれた卵を手にする。名付け親はよく話しかけてくるのだが、言語が違うためか話の内容は分からない。

目の前の穀物の中から、トウモロコシを探してつつき、食べる。

うむ、トウモロコシは今日も美味い。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

食卓には今日も卵料理が並ぶ。 うたた寝シキカ @shimotsuki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ