7th Hand ニンジャが町に寄ってくる ニンニン!

ここは世界のどこかの場末のカジノ

集まる面子はいつも同じ


○登場人物


     ☆サクラ   

      正体不明・天下無敵のハイティーン。   

      スシ好き。回転してる方がカッコいい。   

      人種設定:ワイルドカード   


     ★ムラカミ   

      自称「グレートな男」の残念な熱血系。   

      つきあいゴルフでテンプラしまくる。   

      人種設定:モンゴロイド   


     ★棟梁   

      肩で風切るいなせなジジィ。てやんでぃ!   

      実はカンフーとカラテの区別がついてない。   

      人種設定:コーカソイド(ゲルマン系)   


     ☆ミスホワイト   

      女の武器フルアームドおねーさん。美脚。   

      東洋人は見分けがつかなくてどうでもいいタイプ。   

      人種設定:コーカソイド(スラヴ系)   


     ★ジョニー   

      陽気でファンクな脳筋マッチョ枠。   

      歌の方のスキヤキで泣く。   

      人種設定:ネグロイド   


     ★猫柳   

      存在感薄めの不思議少年。猫がなつく特性もち。   

      たまにザゼンを組んでますが、招き猫って言うのやめてね?   

      人種設定:ワイルドカード   



     ☆ダニエラ   

      冷静沈着な美貌のディーラー。   

      ゲイシャガールはその、うちそういう店じゃありませんから!   

      人種設定:コーカソイド(ラテン系)   


○Guests


     ★ニンジャ   

      ニンジャでござる。ニンニン。   


○ディーラーポジション:猫柳

○DP猫柳-SBジョニー-BBホワイト-UTG棟梁-HIムラカミ-COサクラ




   サクラ以外全員準備が整っている。   

   サクラ登場、スマホを見ながら。   


ダニエラ「いらっしゃい、サクラさん。どうぞお席に……何見てるんです?」


   サクラ、スマホの画面をダニエラに見せる。   


ダニエラ「……アニメですか?」

サクラ 「そ。ダークヒーローものでさ、カードが武器なんよ。カードをこう、指

     に挟んでバッサバッサと、闇に蠢く悪を断つ、みたいな……」

ダニエラ「はぁ、……」

サクラ 「カードって、うまくやれば、リアルでも鉄が切れるらしいんだよね」

ダニエラ「……」

サクラ 「ダニエラさん、デック1個貸してー」

ダニエラ「ダメです」

サクラ 「けちー。ちょっと試させてくれてもいーじゃん!」

ダニエラ「そんな、遊び道具じゃありません!」

全員  「トランプは遊び道具だよ!」

ダニエラ「……あ、そ、そうですね、ごもっとも。……でも、私どもには商売道具

     なんですっ!」

ジョニー「商売でカード遊びさせてんだよね?」

棟梁  「ダイニングの方じゃショーステージで大道芸もやってんだろうが。きれ

     いごと言うない」

ダニエラ「(ため息)わかりました、マジック用のプラスチックカードを持ってき

     ます。あれなら多少乱暴に扱ってもかまいませんので」


   ダニエラ、いったん退場。……すると他の面々も全員、こそこそといっ   

   たん退場していく。   

   猫柳がベースギターを持って再登場。テディ・ペンダーグラスの「do   

    me」を奏で始め、イントロ16小節をリピートする。ジョニーとミスホ   

   ワイトも再登場、パーカッションとコーラスで追随する。   

   ダニエラが手にデックを持って再登場、何を始めたのかと目を白黒さ   

   せるところ、後ろからデックを引ったくりつつ、ムラカミと棟梁がリ   

   ズムを取って駆け込みながら再登場。両名黒のつけひげ、タキシード   

   姿。   

   ミスホワイトがダニエラの手を引いてむりやりコーラスに参加させる。   


   ムラカミ&棟梁、パントマイムでカード投げ芸を始める。   

   ムラカミ、キュウリを手に持っている。棟梁、カードを投げてこれを   

   両断。   

   棟梁退場しようとするが、ムラカミが今度はナスを手に持って「ヘー   

   イ! ヘーイ!」と呼ぶ。   


   棟梁、何度か拒否のしぐさをするが結局戻ってきて、再びカードを投   

   げ、ナスを両断する。   

   棟梁退場しようとするが、ムラカミが今度は大根を手に持って「ヘー   

   イ! ヘーイ!」と呼ぶ。   


   棟梁、何度か拒否のしぐさ。「ヘーイ!」と拒否が繰り返されるとこ   

   ろに、同じく黒のつけひげ、タキシード姿でサクラが踊り込んでくる。   

   棟梁からデックを受け取ると、カードを投げる。   

   するとカードはあらぬ方向へ飛んでいき、壁に当たる。突然壁紙が剥   

   がれる。黒装束に身を固めたニンジャが立っている。   


ニンジャ「よくぞ見破った!」

全員  「うわぁ!」


全員が狼狽する(演奏も止まる。ただしBGMで「盆回し」が流れ始める。変装中

のキャラはここで変装を解除)ところ、ニンジャは壁紙をかなぐり捨てて中央へ。


ニンジャ「我がニンポーを見破るとは、そなたら只者ではないな! ニンニン!」

サクラ 「すげー! ニンジャだー!」

ジョニー「ニンニンとか言ってるよなんか本物っぽいヨ?!」

ムラカミ「ジョニーだまされるな、本物の忍者はニンニン言わねぇ!」

猫柳  「それに忍者は『忍ぶ』ものですよね、見つかったらアウトでは?」

ホワイト「姿を見た者は生かしておかない、とか言い出さないわよね?!」

棟梁  「心配すんなこの俺のカンフーでぇぇ! アチョー!」

ダニエラ「あなたたち何やってるんですかっっ?!」


   ダニエラが一喝して(「盆回し」終了)、ニンジャ含めて全員停止。   


ダニエラ「悪ふざけはたいがいにしてください。まったく……誰のご友人か知りま

     せんが、コスプレまで仕込んで……」

サクラ 「え? 全然知らない人だよ、みんな知ってる?」


   みな一様に首を横に振る。   


猫柳  「たぶん本当に最初から隠れてたんだと思います」


   全員がニンジャを凝視する。   


全員  「…………」

ニンジャ「……………………ニンジャでござる。ニンニン」

ダニエラ「(インカムに、冷静に)デイブー、不審者侵入でーす」

ニンジャ「し、し、失敬な! 拙者は客でござる!」


   ニンジャ、懐から山のようなチップを出す。   


ダニエラ「それは失礼しました、……って、これ、うちのチップじゃありませんよ!」

ムラカミ「そりゃあれだ、ダニエルんとこのだな」

猫柳  「(行ってるんだ……)チップ管理がずさんなカジノは、誉められた話で

     はないですね」

棟梁  「……それより今、どこから出した? よくそんなに入ってたな?」

ニンジャ「いくらでも出るぞ。ホレホレ!」


   ニンジャ、体中のあちこちから次から次にチップを取り出す。体から   

   出し終わると、(コインマジックの要領で)何もない空中やサクラの   

   襟の後ろからもチップが出る。   


サクラ 「すげー! ニンポーだ!」

ダニエラ「その要領で、お札出せますか?」

ニンジャ「わけもなし!」


   ニンジャが九字を切るしぐさ、終わった後に指の間に札。それをダニ   

   エラがぴっと奪い取る。   


ダニエラ「(インカムに)チップご購入いただきましたー」

ニンジャ「え? 拙者のギャラ……」

ダニエラ「客なんですよね? 当店のチップをお買い求めいただきませんと。席は

     どうしましょうか?」

ジョニー「おおおおいらニンジャスキル見てたい!」

ダニエラ「ではニンジャさん、ジョニーさんの席へ」


   言われるまま、素直にニンジャが席につく。その真後ろからジョニー   

   がワクワク顔。他の面々も素に戻って、ポーカー卓へ。ダニエラ、D   

   P決めのカードを配る。   


ダニエラ「今日のディーラーポジションは猫柳さんからです」


   ニンジャSB、ミスホワイトBBを出し、ダニエラがディール。   

   棟梁、ムラカミ、サクラ、フォールド。   


猫柳  「レイズ(3BB)」

ニンジャ「ぬうっ?!」


   ニンジャ、DPからレイズされて長考。   


ホワイト「え、ちょっと! 初回に何考え込んでるのよ! 初対戦なんだから、読

     みも何もないでしょ!」

ニンジャ「む、む、む……分身の術!」


   ニンジャの周りに突然煙が湧き、薄れるとニンジャが3人になってい   

   る。   


サ・ジ 「ニンポーだ!(驚喜)」

ニンジャA「拙者はフォールドで」

ニンジャB「それがしがコールで」

ニンジャC「吾輩はリレイズ也! ニンニン!」

ダニエラ「(即答)ダメです。アクションはひとつにしてください」

ニンジャ「なんとーっ!」


   ニンジャA、ニンジャCがぼんっと煙になって消える。   


ダニエラ「コールですね」

ホワイト「じゃあリレイズ(12BB)」

ニンジャ「なぬ?」

猫柳  「『じゃあ』、ってつけちゃダメでしょミスホワイト。ほいっと(30BBリ

     リレイズ)」

ホワイト「えー?」

ニンジャ「ななぬぬぬ?」


   ニンジャ、長考。   


ホワイト「だからー」

棟梁  「芸人としてはともかく、ポーカープレイヤーとしてはとことんダメだな

     こいつ」

ムラカミ「ダニエルに何をしろって言われて来たんだろうな?」

ニンジャ「む、む、む……」


   ニンジャの周りに再び突然煙が湧き、薄れるとニンジャが3人になっ   

   ている。   


サ・ジ 「ニンポーだーっ!(驚喜)」

ムラカミ「……おまえら楽しそうでイイな」

ニンジャA「拙者はフォールドで」

ニンジャB「それがしはコールで」

ニンジャC「我輩はオールインすべきと思うのだが。ニンニン」

ニンジャA「いやそれはムリ」

ニンジャC「今のリリレイズはブラフに見えるぞ」

ニンジャB「なのでフロップを見るべき」

ニンジャC「ここで退くのはニンジャの名折れ、プライドが許さぬ。ニンニン」


   ニンジャズ、揉め始める。   

   ダニエラ、笑みを顔に貼り付けつつ、ショットクロックを取り出す。   


ダニエラ「クロック導入します。1分で」

ニンジャA「せめて2分」

ニンジャB「3分で」

ニンジャC「いや5分」

ジョニー「今こそニンジャパワーだョ! 時間を止めるんだョ!」

猫柳  「こうしちゃえばいいんじゃないですかね?」


   猫柳が横から、ニンジャA、ニンジャBを指先でチョイとつつく。ニ   

   ンジャA、ニンジャB、煙になって消失。   


ニンジャC「ぬぉっ?!」

ダニエラ「オールインですね、チップを前へ」

ニンジャC「え、あ、うむ」


   言われるままニンジャCはチップを出す。   


ホワイト「あー……つまり猫くん、ブラフスチールじゃないのね(フォールド)」

猫柳  「もちろん! コールです」


   猫柳♣A♣K。ニンジャ♠K♢J。   


サクラ 「あちゃ、完璧なドミネイト」

棟梁  「オフスートのKJで 4bet に突っ張るとは、ムラカミ以上のフィッシュ

     プレイだな」

ムラカミ「え?」


   ダニエラがフロップをオープン。♡Aが落ちる。ターンもラグでニンジ   

   ャの負けが確定。ニンジャ冷や汗を流し始める。   

   ダニエラがリバーを出す前に、突如ニンジャが体の前で印を結ぶ。ニ   

   ンジャの体が煙に包まれる。……煙が晴れたとき、ニンジャとジョニ   

   ーの位置がチップごと入れ替わっている(席にジョニーが座っていて、   

   彼がオールインした状態)。   


ジョニー「ニンポーだぁ……アレ?」

サクラ 「変わり身の術だ! ホンモノだ!」

ニンジャ「では拙者これにて。ニンニン(立ち去ろうとする)」

ダニエラ「ダメです。ご自分のチップを戻してください」

ニンジャ「何の話かな? 拙者オールインなどしておらぬぞ」

ダニエラ「ダ・メ・で・す!」


   ダニエラがにらむ。猫柳が目立たず席を立っている。   


棟梁  「オールインした、って言ってるようなもんじゃねぇかそりゃ」

ホワイト「ていうか、あんた何しに来たの?」

ニンジャ「そうだった。拙者には任務があるのでござった」


   ニンジャ、懐からデータレコーダを取り出しつつ、まだにらんでいる   

   ダニエラの目と視線を合わせ、にらみ返す。さらに、両手で印を結ん   

   でもにゃもにゃ呪文を唱える。するとダニエラの表情が突然甘々な女   

   の子に豹変(催眠にかかっている)。   


ダニエラ「ダニエルだーいすき♡ いますぐ結婚して! ……(催眠が解ける)はっ、

     私は何を?!」

ニンジャ「よし任務完了(データレコーダの録音を止める)」

ホワイト「任務ってそんだけ?! ダニエルはまたつまらないことを考える……」

ニンジャ「では今度こそ、拙者はこれにて御免! ニンニン!」


   ニンジャ駆け去って退場しようとするところ、進行方向に猫柳が立っ   

   て待ち構えている。猫柳が指を鳴らす(擬音「にゃーん」)と、ニン   

   ジャの頭上から金タライが落ちてくる。命中。ニンジャずっこけ、デ   

   ータレコーダとチップケースを投げ出してしまう。猫柳、それらをキ   

   ャッチ。   


サクラ 「ニ……ニンポー?」

猫柳  「え? あぁ、これはただの猫スキル」

ムラカミ「なんじゃそりゃ……」

サクラ 「猫、すげー!」


   ニンジャ、跳ね起きる。体の前で印を結ぶ。   


ニンジャ「かようなところに、我らと同等の術使いがいようとは……だが負けんっ!

      むーんっ!」


   ニンジャ以外全員の頭上から金タライが落ちてくる。命中。ずっこけ   

   る。   

   猫柳、跳ね起きる。指をにゃーんと鳴らす。   


猫柳  「なんのっ」


   ニンジャの頭上から一斗缶が落ちてくる。命中。ずっこける。   

   ニンジャ、跳ね起きる。印を結ぶ。   


ニンジャ「むむむむーんっ!」


   ニンジャ以外全員の頭上から一斗缶が落ちてくる。命中。ずっこける。   


サクラ 「ニンポーすげー、猫すげーけど、痛ぁい!」

棟梁  「……オマエらがやりあうのは勝手だが、俺たちを巻き込むんじゃねぇよ!」


   猫柳、跳ね起きて指をにゃーんと鳴らす。ニンジャに巨大な猫缶が落   

   ちる。   

   ニンジャ、印を結ぶ。ニンジャ以外全員に巨大なサバ缶が落ちる。   


ムラカミ「かくなる上は……この混乱を収める方法はひとつしかない……」


   ムラカミが、ずっこけから立ち直りつつ、猫柳・ニンジャ以外の面々   

   を呼び寄せて耳打ち。   


サクラ 「ナニソレ意味ワカンない」

ホワイト「私やんないわよそんなの」

ムラカミ「いいから。これも、我が故郷に古くから伝わる秘術のようなものだ」

ジョニー「ニンポーみたいな?」

ムラカミ「ニンポーみたいな」

サクラ 「やる!」


   猫柳・ニンジャ以外、横一列に並んで、リズムを取って踊り始める。   

   猫柳、指をにゃーんと鳴らす。ニンジャに招き猫が落ちる。   


サクラ 「宿題やったか?!」


   ニンジャ、印を結ぶ。ニンジャ以外全員に信楽狸が落ちる。   


ジョニー「風呂入ったか?!」


   猫柳、指をにゃーんと鳴らす。ニンジャの頭上から猫が一匹落ちてく   

   る。ニンジャの手の中に収まる。ニンジャ、顔をひっかかれて悶絶。   


棟梁  「歯ァ磨けよ!」


   ニンジャ、立ち直る。印を結ぶ。   


ニンジャ「むむむむ最終奥義ィーーッ!」


   ニンジャを含めて、全員の頭上からバケツの水が盛大にぶっかけられ   

   る。バケツの中には魚介類が入っており、ビタビタと床を跳ねる。ニ   

   ンジャをひっかくのをやめて魚にじゃれつく猫。   

   ずぶ濡れになって呆然とする面々の頭上に、最後にバケツが落ちてき   

   て命中。   


ダニエラ「…………あぁもう、また来週ぅーーっ!」


   ダニエラの声と同時にボンッと一面に煙が立ちこめる。   

   煙が薄れて視界が戻ったときには、人も物もすべて消えていて、後に   

   は何も残らない。   


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