12th Hand 審・判・の・日


ここは世界のどこかの場末のカジノ

集まる面子はいつも同じ


○登場人物


     ☆サクラ   

      正体不明・天下無敵のハイティーン。   

      あかぶたさん(とってもきがつおい! おこりんぼ)   

      人種設定:ワイルドカード   


     ★ムラカミ   

      自称「グレートな男」の残念な熱血系。   

      きぶたさん(かるい あっかるい らりぱっぱぁ)   

      人種設定:モンゴロイド   


     ★棟梁   

      肩で風切るいなせなジジィ。てやんでぃ!   

      くろぶたさん(…………こわいっ!)   

      人種設定:コーカソイド(ゲルマン系)   


     ☆ミスホワイト   

      女の武器フルアームドおねーさん。ごじさんすーつ。   

      はいぶたさん(あたまはいいけど ちょっちにぶい)   

      人種設定:コーカソイド(スラヴ系)   


     ★ジョニー   

      陽気でファンクな脳筋マッチョ枠。   

      だいぶたさん(すっきりさわやか すぽぉつまん)   

      人種設定:ネグロイド   


     ★猫柳   

      存在感薄めの不思議少年。猫がなつく特性もち。   

      ちゃぶたさん(なまけものの ごろんたくん)   

      人種設定:ワイルドカード   



     ☆ダニエラ   

      冷静沈着な美貌のディーラー。   

      みらあぶたさん(?  ?  ?)   

      人種設定:コーカソイド(ラテン系)   


○Guests


     ★ダニエル   

      ダニエラの従兄弟にして宿命の敵(?)   

      みずぶたさん(かるくて なんぱな いやなやつ!)   


     ★デイブ他店員たち   

     ★強盗首魁・強盗A・強盗B・強盗C他強盗団の面々   

     ★謎のおっさん   


○ディーラーポジション:サクラ

○猫柳-ジョニー-ホワイト-棟梁-ムラカミ-サクラ




   すでに全員着席している。背景音として銃声が続けざまに響き渡って   

   おり、室外でまるで戦争が起きているかのような、激しい抗争・銃撃   

   戦の勃発を示している。   

   部屋の隅に白い粗末な貫頭衣を着た髭面の謎のおっさんがいて、ぼーっ   

   と立っている。   

   卓の面々はおっさんに気づく様子がない。ムラカミを除いて、神妙な   

   顔で卓上を注視している。ムラカミひとり、シュコー、シュコーと   

   (ヘルメットかぶってないのに)ダースベイダーのごとき呼吸を繰り   

   返しながら体中から熱気を発散し、目をらんらんと輝かせている。彼   

   の前にはチップが山と積み上がっている。   

   ハンドが進行中。ターンまで終わって、サクラとムラカミのヘッズ。   

   サクラはオールインしておりポットも積み上がっている。他は下りて   

   いる。   

   ボードは♠6♠8♢A♡9。   


ダニエラ「(声が震えている)ラストカード、オープン……」


   リバー、♠5。ムラカミが目を輝かせたまま胡乱な表情となってショー   

   ダウンする。♠7♠Jで、フラッシュが成立している。サクラ、♣A♢9   

   を投げ出す。   


サクラ 「あぁっ! また引かれたぁ……!(卓に突っ伏す)」

ムラカミ「(不気味な笑い)むふふふふふふシュコー……シュコー……」

ホワイト「(声が震えている)いったい何が起きているのっ……? さっきから全

     部ドローがヒットしてるわ……っ」

ジョニー「それ以前に、フロップでドローになり過ぎだよ! そしたらムラカミ絶

     対下りないから、こっちはバリュー積みに行くのに、それをリバーで回

     収されてる……」

棟梁  「年に一度、いや一〇年に一度の珍事だ。バクチの神が降臨してムラカミ

     に憑依しているに違いない……っ! 恐ろしい、だが目が離せん」


   チップがムラカミの前に移動、ムラカミは黙って積み上げ直す。   


ムラカミ「一つ積んでは父のため……二つ積んでは母のため……シュコー……」

猫柳  「ムラカミさんそれはやめてください、不気味すぎます。……何か、あり

     ました?」

ムラカミ「昨夜、夢を見た」

猫柳  「どんな?」

ムラカミ「四人の騎士が来た後に天使がラッパを吹いた」

猫柳  「仏教なのかキリスト教なのかハッキリした方がいい気がしますが、それ

     で?」

ムラカミ「おっさんの顔した天使が……リリコとハイファイブしてた」

全員  「……???」


   沈黙。シュコー、シュコーと呼吸音。外から響く銃声。金属やガラス   

   の破壊音。悲鳴。   

   おっさんが変顔しながらウロウロしている。   


猫柳  「……ところでダニエラさん、まだ続けるんですか。なんだか外がヤバい

     ことになってる感じなんですけど……」

ダニエラ「外はデイブがなんとでもしてくれます。それより、ここでやめたらムラ

     カミさんに殺されます。私はそっちの方が怖い……っ」

ムラカミ「ふふふへふへふへ逃げるのは許さん。今日の贄は貴様らだ。我の糧とな

     れシュコー」

ジョニー「なんかヤバいよムラカミぃ。おいらおうちに帰りたいよぅ」

サクラ 「弱気になるなジョニー! これ以上養分になってたまるかちくしょー!

      ダニエラさん、リバイ」


   ダニエラが神妙な顔。   


ダニエラ「みなさん。ひとつお伝えすることがあります」

棟梁  「……なんだ?」

ダニエラ「今のサクラさんのリバイで、この室内で準備できるチップが尽きました。

     外に出てメインのキャッシャールームに行かねば、補充は不可能です」


   全員沈黙。外から響く銃声。金属やガラスの破壊音。悲鳴。   

   おっさんが変顔しながらウロウロしている。   


ホワイト「さっき〝糧〟って単語出てたけど、ポーカーで〝糧〟って、チップのこ

     とよね」

ジョニー「チップは命と同じってよく言うよね……」

棟梁  「つまり……我々の命は、いま手元にあるチップがすべてであり、そして

     ムラカミはその命を食らい尽くすまで暴虐の手を止めるつもりはないの

     だ。この危地を脱するには邪神ムラカミを倒さねばならず、それが為し

     おおせなかったとき、我々の命は文字通り尽きる。生き残りたければ!

      意地でもムラカミからかっぱげ!」

ホワイト「……全員さっさと負けちゃった方が良くない?!」

サクラ 「負けて花実が咲くか馬鹿野郎、バクチ打ちはいつだってタマァ張ってんだ

     オラァ!」




   時間経過。   

   変わらず続く銃声、金属やガラスの破壊音、悲鳴。   

   おっさんが部屋のすみっこでサイコロを振るしぐさをしている。賽の   

   目を幻視して喜んだり悲しんだりする。   

   棟梁の「ぎゃーっ」という絶叫、卓に突っ伏す。シュコー、シュコー   

   の息も荒くチップを回収するムラカミ。渋い顔をする卓の面々。   

   突然武装した強盗Aが闖入し、卓の面々に銃口を向ける。   


強盗A 「オラてめぇら何やってる! 大人しく手ェ挙げて金出せやオ」(銃声)


   ダニエラの手に硝煙を上げる拳銃。ノールックシュートで強盗Aを撃   

   ち抜いている。強盗A吹っ飛び、死体となって転がる。   


ダニエラ「続けます」

ムラカミ「(手を合わせて祈る)南無八幡大菩薩……。シュコー」

猫柳  「祈るのは八幡様なんですね……」


   謎のおっさんが強盗Aの死体に近づく(他の登場人物は誰もこの行動   

   に反応しない)。肩をとんとんとつつくと、強盗Aは生き返って立ち   

   上がり、退場。   




   時間経過。   

   変わらず続く銃声、金属やガラスの破壊音、悲鳴。   

   おっさんが部屋のすみっこで競馬のモンキー乗りの姿勢でいる。馬に   

   鞭を打つようにときどき自分の尻を叩いて痛みで顔を歪ませる。   

   ジョニーの「うわーっ」という絶叫、卓に突っ伏している。シュコー、   

   シュコーの息も荒くチップを回収するムラカミ。渋い顔をする卓の面   

   々。   

   棟梁は卓から離脱している。匍匐前進して部屋の外(下手方向)へ向   

   かっている。   


棟梁  「かくなる上は……なんとかキャッシャールームへ向かい、チップを補充

     するしかないっ……」


   突然下手方向から武装した強盗Bが闖入し、卓の面々に銃口を向ける。   


強盗B 「てめぇらも挽き肉だぁ!」

棟梁  「あーちょぉぉぉっ!」


   立ち上がった棟梁が跳び蹴りを食らわせ、着地、からの、正拳突き→   

   アッパーカット→のけぞるところに何か唐突に掌の中に生まれた怪し   

   げな光を土手っ腹に叩き込む→ピヨったところに乱打を打ち込み→倒   

   れたところに追い打ち一発。強盗B、ピクリとも動かなくなる。   


サクラ 「即死コンボすげー……」

ホワイト「ってか棟梁、ホントにカンフー使えたの?」

ムラカミ「(手を合わせて祈る)唵阿毘羅吽欠オンアビラウンケン蘇婆訶ソワカ。アッラーアクバル。

     シュコー」

猫柳  「……もう、何の神様でもいいです」

ダニエラ「続けます」


   謎のおっさんが強盗Bの死体に近づく(他の登場人物は誰もこの行動   

   に反応しない)。肩をとんとんとつつくと、強盗Bは生き返って立ち   

   上がり、退場。   




   時間経過。   

   変わらず続く銃声、金属やガラスの破壊音、悲鳴。音量が上がってお   

   り、戦場が迫っていると示している。下手方向からは新たな強盗が登   

   場し、棟梁がカンフーで戦い続けている。   

   おっさんが部屋のすみっこであぐらをかいている。はじめは座禅を組   

   み真面目な顔で手を組んで祈っているように見せて、いきなり麻雀牌   

   を倒し点棒をかき集めるしぐさ(手を組むのは「倍プッシュだ……」   

   のマネ)。   

   ミスホワイトの「きゃーっ」という絶叫、卓に突っ伏している。シュ   

   コー、シュコーの息も荒くチップを回収するムラカミ。渋い顔をする   

   卓の面々。   

   ジョニーは卓から離脱している。匍匐前進して部屋の外(上手方向)   

   へ向かっている。   


ジョニー「おいらはこっちから……なんとかチップを補充しないと……」


   突然上手方向から武装した強盗Cが闖入し、卓の面々に銃口を向ける。   


強盗C 「うぉらてめぇらお命頂戴! 俺たちゃ、安い早い確実がウリのレンタル

     強盗団だ! 電話一本どこでも参上、ご依頼ご要望にお答えして襲撃し

     ちゃうんだぜベイベー……!」

ジョニー「イェア、レッツダーンス」

強盗C 「ベイベぇ……え?」


   ジョニーが謎の踊りを踊り出す。すると強盗Cもつられて踊り出す。   

   自分で自分の体をコントロールできない。踊りが激しくなるにつれ、   

   強盗Cの関節があらぬ方向へ曲がり出す。やがてめきめきと骨の折れ   

   る音がして強盗C昏倒、ピクリとも動かなくなる。   


サクラ 「ジョニーあんな技持ってたの?!」

ムラカミ「(手を合わせて祈る)ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるふ ふたぐ

     ん! シュコー」

猫柳  「ムラカミさんが邪神の呼び出しまで始めちゃってますからね……棟梁さ

     んもジョニーさんも、今この場を支配する妖しい怪異にアテられてしまっ

     たものかと」

サクラ 「ヤバくね?」

猫柳  「ヤバいです。(はっと何かに目覚めた表情をし、唐突に手を合わせて祈

     り始める)かくなるうえは、偉大なる猫神様におすがりするより他に手

     はありません。猫神様! 我にお力をお貸しください!」

サクラ 「にゃん太まで! それも何かにアテられてるっしょ!」

ダニエラ「(シャッフルしつつ考えている)それより、今あの人、『依頼された』っ

     て言いませんでした?」


   謎のおっさんが強盗Cの死体に近づく(他の登場人物は誰もこの行動   

   に反応しない)。肩をとんとんとつつくと、強盗Cは生き返って立ち   

   上がり、退場。   

   そして謎のおっさん本人も変顔しながら退場し姿を消す。   


   次のハンド。ムラカミ、サクラ、猫柳に手札が配られる。それぞれに   

   真剣に手札を見る。DP猫柳。   


猫柳  「ベット(3BB)」

ムラカミ「コール」

サクラ 「コール」


   フロップ♠7♠10♠J。   


猫柳  「……ベット(ハーフポット)」

ムラカミ「シュコー……シュコー……むはははははははははははオールイン」

サクラ 「モノトーンボードでオールインって……確実にフラドロついてんじゃん。

     下りー」

猫柳  「ふ、ふふふふふ」

サクラ 「?! どったのにゃん太?」

猫柳  「神は我を見捨てなかった」

サクラ 「マジで? 猫神様?」

猫柳  「そうです猫神様は偉大なのです。仏も邪神も何するものぞ。そのオール

     イン、コールです!」

ホワイト「(震えながら祈り始める)神々の戦争が始まったのですね……ティタノ

     マキアかラグナロクか……もはやひ弱な人類に止める術はありません」

サクラ 「しっかりしろシロ! ギリシャも北欧も関係ねぇ!」

ダニエラ「えっと、双方オールインですので、カードオープン願います」


   猫柳♠8♠9。フロップストフラ。   


サクラ 「おぉー、すげー! ……でも今のムラカミなら、上ストフラ引いちゃう

     んじゃない?」

猫柳  「上ストフラってロイヤルですよ。それにそうなる手札なら、いくらムラ

     カミさんでもプリフロでレイズするはず……っ」


   ムラカミもゆっくりと手札をオープン。♠A♣2。   


猫柳  「これならっ……いけるっ……はずっ……!」

ダニエラ「ターンカード、オープン」


   ターン♠Q。   


猫柳  「え」

サクラ 「……にゃん太、あきらめろ。今日のムラカミに確率なんて意味ない」

猫柳  「猫神様っっっ……今こそ我に究極最高の猫スキルをっ!(祈る)」

ダニエラ「ラストカード、オープ……」


   至近距離で銃声。   

   リバーを置こうとしていたダニエラの指先にあったカードが弾け飛ぶ。   

   隅だけがちぎれて卓上に落ちる。♠Kだったように読み取れるが判然と   

   しない。   


猫柳  「猫神様っ……!」

ダニエラ「伏せてっ!」


   同時に、上手下手双方からどっと人が現れ銃撃戦開始(上手側がデイ   

   ブ含む店員側、下手側が強盗側)。棟梁とジョニーは押し返される形   

   で卓のそばまで戻る。   


強盗首魁「死ねやコラァ!(撃ちまくる)」

デイブ 「何のォォォっ!(撃ちまくる)」


   ダニエラがポーカーテーブルを蹴り上げて盾にし、吹き飛ぶカードや   

   チップ。拳銃を取り出し銃撃戦に参加するダニエラ、シュコシュコ立   

   ち尽くすムラカミ、猫神様に感謝の祈りを捧げる猫柳以外はテーブル   

   の内側に全員伏せる。   


ムラカミ「俺の……ロイヤル……フラッシュ……シュコー」


   ムラカミ、どこからともなくライトセイバーを持ち出す。無表情でぶ   

   んぶんと振り回し、銃弾をすべて弾いて、強盗団の方へ突き進んでい   

   く。強盗首魁が驚きながらマシンガンを構え、ムラカミに向かって撃   

   ち込もうとするが、ムラカミが刃の切っ先でその腕を跳ね上げると、   

   銃口があらぬ方向へ向く。   


猫柳  「猫神様の御加護です」


   猫柳には後光が差している。放たれたマシンガンの弾丸の飛ぶ方向が、   

   後光に導かれてねじ曲がり、きれいに列をなして壁に当たってちょう   

   ど扉の形状になる。その部分だけ残して、「キートンの蒸気船」のご   

   とくに壁が手前に倒れる。卓の近くにいた面々だけ助かり、もともと   

   銃撃戦してた連中は倒れた壁に頭を殴られるかたちになって昏倒。銃   

   撃戦が止み、全体が静かになる。   

   残った壁の上の高い位置に、謎のおっさんが立っている。猫柳に差し   

   ていた後光が消え、おっさんの背後に移る。猫柳とムラカミ含め、全   

   員が我に返る。   


ムラカミ「あ」

猫柳  「れ……?」


   おっさんから後光が差して初めて、登場人物全員、その存在に気づく。      


ホワイト「誰、あれ?! いつの間にいたの?!」

サクラ 「教科書通りのデウスエクスマキナ来たー!」

棟梁  「いや、あれはきっとバクチの神だ。話に収拾をつける都合のいい神様じゃ

     なく、物事が面白くなるようにサイコロを振るだけの神だ。だが、我ら

     が信じるべきものだ……!」

サクラ 「つっても今日のはやりすぎじゃね? 人バカにしてるよねあいつ?」

棟梁  「いいから今は祈っとけ!」

ジョニー「バクチの神様、おいらにもロイフラください!」


   棟梁に促され、ダニエラ以外は、おっさんの前にひざまずき、祈りを   

   捧げる。   


         〝天にましますバクチの神よ、

       願わくは御名をあがめさせたまえ。

         キングスを来たらせたまえ。

  御心が27oであるとしても、ボードはフルハウスになさせたまえ。

    我らにデイリートーナメントを今日もプレイさせたまえ。

   我らにスチールを試みるものに我々がフォールドするごとく、

        我らのスチールをも通したまえ。

  我らにスケアカードを与えず、クソコーラーより救い出したまえ。

キングスとエイセズと積み上がるポットは、限りなく我らのものなればなり。

            オールイン。〟


   後光の光量が増す。おっさん、両腕を挙げて大きな輪を作り、喜びに   

   満ちた笑みを浮かべる。その笑みを見て下僕たちは大いに喜ぶ。   

   ダニエラだけ立ち尽くしている。   


ダニエラ「私は、それより、やらなきゃいけないことがあります」


   ダニエラ、倒れた壁の下から強盗首魁だけ引っ張り出す。   


ダニエラ「(ニッコリ微笑む)お話聞かせてもらってもいいですか? 誰に頼まれ

     ました? ここまでやれって言われましたか?」


   返事を待つまでもなく、唐突に脳天気にふわふわ踊りながらダニエル   

   登場。強盗首魁をダニエラから引き剥がし放り投げ、ダニエラの手を   

   取る。   


ダニエル「やあ! 強盗が来るなんて大変だねダニエラ! 危ないからこのお店、

     たたんだ方がいいんじゃないかな! それがいいそうしようそうしよう」


   ダニエラから表情が消える。取られた手を逆に引っ張り、ダニエルを   

   おっさんの前に無理矢理ひざまずかせる。他の面々は立ち、祈りの場   

   所をダニエルに譲る。   


ダニエル「え? なに? なんなのこの人? ボクなにも悪いことしてないよ? 

     え?」


   後光の光量が増す。おっさん、両腕を交差させて×印を作り、怒りに   

   満ちて顔を歪める。落雷の轟音とともに、空から大量の水がダニエル   

   に浴びせかけられる。   


ダニエル「なんでーっ?!」


   最後に金属バケツが落ちてきて、ダニエルの頭に命中。そのバケツを   

   ダニエラが拾い、思いっきりダニエルを殴りつけるまでが1セット。   

   ダニエル、昏倒。   


ダニエラ「神様ありがとうございました。悪の元凶をとっちめることができました。

     ……ところで神様でしたら、(銃撃戦でボロボロになった店内を見渡す)

     この通りの状況ですので、今日一日で生じた店の損害の方もなんとかし

     ていただけると……」


   おっさん、しばらくうろたえ、もじもじして、冷や汗をダラダラ流し、   

   やがて肩をすくめつつ作り笑いを浮かべる。ダニエラは肩を落とす。   


ダニエラ「やっぱりムリですか……では今後、当店への出入りを禁止といたします。

     もうこんなことはゴメンですので」


   おっさん、驚愕の表情を浮かべた後、すごすごと退場。   


サクラ 「神様出禁にしたぁーっ!」

ムラカミ「俺はもう二度とロイフラにはめぐりあえないのか……っ!」

ホワイト「強盗団がダニエルの仕込みだったんなら、そこまでしなくていいんじゃな

     い?」

棟梁  「ちょっとスリリングになっただけじゃねぇか。バクチ打ちとしちゃあ望む

     ところだ」

ジョニー「棟梁ー、それがよくなかったんだとおいら思うんだよ」

猫柳  「猫神様はいいですよね? みんなで猫神様を奉じましょう」


   この会話の間に、倒れた壁の下から、デイブが満身創痍・疲労困憊の姿   

   で這い出している。ダニエルも昏倒から目を覚まし体を起こそうとする   

   が、デイブが金属バケツを拾い上げてもう一発食らわせ、再昏倒させる。  


ダニエラ「デイブ、苦労をかけます───苦労ついでに、店の修繕の見積、取っても

     らえますか」

デイブ 「今日ばかりはちょっと転職が脳裏をよぎりましたが、かしこまりましてご

     ざいます、お嬢さ……オーナー(ダニエルを引きずって退場)」

ダニエラ「みなさんははい整列ー」


   ダニエラはいつもの6人を横並びにさせる。あらためてボロボロの店内

   を見渡し、大きくため息。微妙に半ギレ。   


ダニエラ「まったく、神も仏もありませんね!」

サクラ 「そうだね、たった今追い出したばっかりだからね!」

ダニエラ「かくなるうえは、すべきことをひとつひとつコツコツと為す、人のいとな

     みに立ち返るしかありません。しーかーるーに、当店は改装のためしばら

     く休業いたします! 再開時期はまた追ってお知らせします。今後もどう

     ぞごひいきに!」

全員  「えーーーっ!」

ダニエラ「ご利用どうもありがとうございましたー!」


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