6th Hand 宿命の敵? ダニエル登場!


ここは世界のどこかの場末のカジノ

集まる面子はいつも同じ


○登場人物


     ☆サクラ

      正体不明・天下無敵のハイティーン。

      好きな音楽はガドガードOP。

      人種設定:ワイルドカード


     ★ムラカミ

      自称「グレートな男」の残念な熱血系。

      好きな音楽はG1ファンファーレ(関東)。

      人種設定:モンゴロイド


     ★棟梁

      肩で風切るいなせなジジィ。てやんでぃ!

      興味ないので孫が基準。最近のカラオケはドラゲナイ。

      人種設定:コーカソイド(ゲルマン系)


     ☆ミスホワイト

      女の武器フルアームドおねーさん。わりとドジっ子。

      レリゴー。

      人種設定:コーカソイド(スラヴ系)


     ★ジョニー

      陽気でファンクな脳筋マッチョ枠。

      男は黙って浪花節。芸のためなら女も泣かすぜメーン?

      人種設定:ネグロイド


     ★猫柳

      存在感薄めの不思議少年。猫がなつく特性もち。

      「店の名はライフ」。ミスホワイトは陰でヘドバンしてると思う。

      人種設定:ワイルドカード



     ☆ダニエラ

      冷静沈着な美貌のディーラー。

      ミスホワイトは陰でヘドバンしている。私は見た。

      人種設定:コーカソイド(ラテン系)


○Guests


     ★デイブ

      ダニエラの初老の忠臣。カジノの責任者。

     ★ダニエル

      ダニエラの従兄弟にして……?


○ディーラーポジション:棟梁

○棟梁ーSBムラカミ-BBサクラ-UTG猫柳-HIジョニー-COホワイト




   サクラ以外は席についている。

   棟梁は始めから不機嫌で苛ついた様子。

   ダニエラは黙々とシャッフルしている。

   サクラ登場。駆け込んでくる。


サクラ 「ねぇ、見た? 表! ってか表通り!」

猫柳  「何ですか、いきなり?」

サクラ 「でかいの建ってたじゃん! 新しいカジノ! いつの間に工事してたの?」

ジョニー「イエァ、できてたよねすっげえデカくて派手なアレ、工事速かったねー」

サクラ 「商売敵じゃん。ここ、ヤバいんじゃないの?」

ホワイト「大丈夫よ。ビーチに来る観光客向けでしょ? 客層が違うわ」

ムラカミ「オレらにゃあんま関係ないっしょ」

棟梁  「フン」


   棟梁、そっぽを向く。

   ダニエラも黙々とシャッフルを続けている。


サクラ 「どったの棟梁?」

猫柳  「あのカジノ、棟梁とこの仕事じゃないですよね。もしかして商売で揉め

     ました?」

棟梁  「……仕事が速けりゃいいってもんじゃねぇんだよ。見た目派手だが作り

     はてんでチャチでよ、金かけてねぇの丸わかりでよ……発注元はわかっ

     てんだ、一見の観光客相手にボッタくる気満々だってこともな。えげつ

     ない真似しやがる……」

ムラカミ「げ、そうなのかよ。やべー、通い詰める気だったのによー」

猫柳  「(ムラカミさんは一度痛い目を見るべきかと……)さてダニエラさんが

     静かですね。内心気が気でないのではないですか?」

ダニエラ「……(無表情)……始めますよ。準備はよろしいですか?」

全員  「?」


   ダニエラの表情が硬い。無言でシャッフルを続ける。


猫柳  「ダニエラさん?」

ダニエラ「……」

ムラカミ「なんか……怒ってね?」

ダニエラ「怒ってはいません。……(ディーラー決めのカードを卓に刺さる勢いで

     投げる)」

サクラ 「(小声)なに、あのカジノの話そんなにアンタッチャブルなの?!」

ジョニー「(小声)実は強敵で、開店したら最後この店潰れっちまうとか、ノォォ

     な感じ?」

ホワイト「(小声)知らないわよそんなの!」

ダニエラ「(カードを開く)最初のディーラーは棟梁さんです」

棟梁  「(カードを突っ返す)おいダニエラ、客商売だってこと忘れんな、もう

     ちょい愛想よくしろや」

ダニエラ「ごめんなさい、でも……(言葉を濁す)……棟梁さんにはご理解いただ

     けると信じてます。今日の私はそれどころではないのです」

棟梁  「ヤツが来るのか? 今日? (ため息)そうか……」

棟梁以外「???」


   ポーカールームの外でどがちゃがと物音。


ダニエラ「来た。……(インカムに)厳戒態勢。カジノフロアに一歩たりとも入れ

     させるな」

棟梁以外「厳戒態勢……?」

ダニエラ「(インカムに)……突破された? ではテーブルゲームフロアに非常線

     を張れ。銃の使用を許可する。射殺してもかまわん」

棟梁以外「射殺?!」


   ビビる一同、棟梁だけ動じない。


ダニエラ「私がいいと言っているんだ! やれ!」


   外から激しい物音。次第に近づいてくる。

   デイブ登場。よろめきながら。ダニエラの前で苦しげに膝をつく。手   

   にリボルバー銃を持っている。


デイブ 「申し訳ありません、お嬢……」

ダニエラ「ここでは『オーナー』!」

デイブ 「……お、オーナー。突破されました」

ダニエラ「だから射殺しろと!」


   ダニエラ、デイブの手から銃をもぎ取る。弾倉確認、すぐに閉じる。   

   ポーカールームに踊りながらダニエル登場。派手な服装で、金の腕時   

   計を始め、やたらゴテゴテとアクセサリーを身につけている。カッコ   

   よさ気なポーズを決めた後、ダニエラに近づき、肩に馴れ馴れしく手   

   を回す。


ダニエル「はぁーはっは、やぁぁダニエラ、我がイトコにして宿命のライバル、そ

     して愛するハニー、元気してたかーい?」

ダニエラ「帰れ」

ダニエル「つれないなぁダニエラ、子供の頃はあーんなに可愛くて、僕の後をお兄

     様お兄様と呼びながら、トコトコ走ってついてきたじゃあないかー」

ダニエラ「か・え・れ」


   ダニエラ、ダニエルの首根っこをひっつかみ、リボルバーの銃口をダ   

   ニエルの額に押しつけ、撃鉄を起こす。


ダニエル「ダニエラ、銃は使うとき以外は人に向けちゃいけないって、お祖父じい様に

     教わったろぉ?」

ダニエラ「そうね、使うときは一撃で無力化して、トドメに脳天にもう一発、とも

     教わったわ」


   みなの血の気が引く、棟梁のみまたため息。立ち上がってダニエラに   

   近づく。


棟梁  「なるほどよくわかった。ダニエラ、ここを馬鹿の血で汚しても、先代は

     喜ばんぞ」

ダニエラ「そんな甘いことを言っているから、馬鹿がつけあがるんです!」

棟梁  「いいからその物騒なモンは下ろして、頭冷やせ」

ダニエラ「でも、」

棟梁  「(顔をずいと近づける)下がってろ」


   棟梁、ダニエラから銃を取り上げてデイブに渡す。棟梁に促されたダ   

   ニエラは部屋の端へ。彼女を追いかけて、なお絡もうとするダニエル   

   の襟首を、棟梁がひっつかむ。


棟梁  「オメェはここに残れ」

ダニエル「何で? 僕はダニエラにマイカジノ開店の挨拶に……」

棟梁  「ここじゃあ俺は客だ、客を立てろ。オメェもカジノのオーナーになった

     んなら、わきまえな。そこんとこちゃんとできるか、俺が確かめてやろ

     うってのよ」

ダニエル「……はぁ」

棟梁  「まずダニエル」

ダニエル「はぁ」

棟梁  「2分耳を塞げ」


   ダニエル、言われるままに耳を塞ぐ。棟梁が他の5名を呼び集め、卓   

   上で顔を突き合わせる。


棟梁  「状況を説明してやる。おこちゃまのサクラにもわかるようにな」

サクラ 「なんかイラッと来たけどまぁいいや、続けて」

棟梁  「ダニエラが祖父から継いでこの店をやってるのは教えたな? その祖父っ

     てのはこの町の名士だ。町を牛耳る一族ファミリーの長だった、と言ってもいい。

     ダニエラは、けっこうなお嬢様なわけよ。5年前にオールドダニエル、

     その祖父が死んだとき、この店は孫のダニエラが継いだわけだが、ファ

     ミリー全体の統帥は長男のジョージが継いだ。その息子が今来たダニエ

     ルだ。普通に考えれば、この先ヤツが三代目になる。当のダニエルもそ

     の気でいる。だが……あのとおりだ」

猫柳  「あのとおり……」

ジョニー「あのとおり、ね……」

ムラカミ「あのとおり、か……」

サクラ 「つまり、馬鹿、と」

ホワイト「はっきり言い過ぎ!」

棟梁  「そこで、頭のいいダニエラを跡目に推す一派が生まれた。本人にそんな

     野心はないんだけどな。このままじゃ跡目争いが勃発しちまう。ってと

     こで、折衷案が出された。野心はあるが頭の悪いダニエル。野心はない

     が頭のいいダニエラ。祖父の名を受け継いだ従兄妹同士を、くっつけちゃ

     えばうまくいくんじゃね? ってな」

猫柳  「……野心に欠けて頭の悪い発想ですね」

棟梁  「けど、ファミリーの内々じゃこれが一番いいアイディアってことになっ

     てて、特にダニエル本人が大乗り気だ」

サクラ 「……サイテー……」

ホワイト「あの冷静で温厚なダニエラがキレるわけだわ……」

棟梁  「ダニエラに言わせりゃ、ダニエルとくっつくくらいならファミリーを牛

     耳る方がマシだとさ」

ジョニー「それもそれでヤバスギ! 抗争激化待ったなしだヨ」

棟梁  「だがボンクラのダニエルにゃ、なぜダニエラが拒むかわからない。ヤツ

     が空っぽのアタマで捻り出した結論はこうだ、『祖父から受け継いだこ

     のちっぽけな店が、彼女を縛っているのだ』ってな。あぁかわいそうな

     ダニエラ、思い出の呪縛に囚われて身動き取れずにいるんだね、よしボ

     クがナイトになって救ってあげよう、そのために何とする? この店が

     潰れるくらいすごい店を作って彼女にプレゼントしてあげよう。呪縛は

     消え彼女はハッピー、一石二鳥でWin-Win」

ムラカミ「なるほどそういう発想……」

サクラ 「(ムラカミにグーパン)……ありえねー……ちょっとボコってきてい

     い?」

ムラカミ「痛ッ! もうボコってる! もうボコってるから!」

ホワイト「(逆からムラカミにグーパン)イマドキお家が結婚相手を決めるとか…

     …女としてボコっとかなきゃ気がすまないわね」

ムラカミ「気がすまないのはわかるけど! だからなんでオレ?!」

ジョニー「この店なくなるのは困るヨ! 顔馴染み同士ぬくぬくやれるのが小さい

     店のいいとこなのにさ!」

猫柳  「ホントはよくないんでしょうけどね、オーナーが常連と馴れ合ってるな

     んて。でも、ダニエラさんが喜ばない話を、我々が受け入れる道理はあ

     りませんね」

棟梁  「よし、決まったな。ヤツを潰すぞ」


   皆が頷いて、円陣が解ける。


棟梁  「耳開けていいぞ、ダニエル(ジェスチャーしながら)」

ダニエル「絶対2分以上かかってるよね?」

棟梁  「細けぇヤツだな。……いいかよく聞けダニエル、おまえにどれだけカジ

     ノのオーナーたる資格があるか、これから俺たちがテストする」

ダニエル「資格? テスト?」

棟梁  「ダニエラは俺たちをちゃんとポーカーで楽しませてくれる。おまえさん

     にそれができりゃ合格だ、何も言うこたァない」

ダニエラ「えーでも、僕はディーラーはちょっと……」

棟梁  「別にディーラーでなくてもいいんだ、プレイヤーでいい。ムラカミ、ど

     け。ダニエル、そこ(ムラカミ席)に座れ」

ムラカミ「えぇ? オレ?」

棟梁  「デイブ、ディーラーできるな?」

デイブ 「もちろん」

棟梁  「頼む。あと、ステークスを一桁上げてくれ」

デイブ 「よろしいんで?」

棟梁  「よろしいんで」

デイブ 「かしこまりました」

棟梁  「よぅしダニエル、俺らと一丁やろうぜ。楽しませてくれよ、な?」


   数十分後。


サクラ 「いやぁ、楽しいなーっ!(こいつとんだコーラーじゃん!)」

猫柳  「楽しいですねぇーっ!(バリュー積めば積むだけ出してくれるし!)」

ジョニー「サイコーだよあんた……サイコーだ!(ぜってぇオッズ知らねぇ!)」

ホワイト「ホントもう……あなた(のチップ)が欲しいわ」

棟梁  「いやぁ……素晴らしいぞダニエル! みんなをこんなにも楽しませる!

     理想のカジノオーナーだ、なぁ!」

ダニエル「えっと……あれ、おかしいな、……もうチップが……」

棟梁  「おまえ、いい腕時計してんな」

ダニエル「はい?」

棟梁  「デイブ、お前の見立てでいい、そいつぁどれくらいになる」

デイブ 「2000……というところでしょうか」

棟梁  「よし、そんだけチップをくれてやれ」


   棟梁とデイブの連係プレーで、ダニエルの腕時計は巻き上げられ代わ   

   りにチップが置かれる。


棟梁  「よし、続けるぞ!」


   時間経過。

   ダニエルが身につけていたアクセサリーがすべて消えている。

   卓の他のメンバーのチップが増えている。

   ダニエラは離れたところから、心配そうに卓の様子をうかがっている。   

   ムラカミは殴られたあたりをさすりながら、所在なく体育座り。


   時間経過。

   ダニエルの派手な衣服が消えて上下インナーのみになっている。

   卓の他のメンバーのチップが増えている。

   ダニエラはどこかへ電話をかけている。つながって表情がパッと明る   

   くなる。

   ムラカミは所在なく体育座り。


   時間経過。

   ダニエルがパンツ一丁になっている。

   卓の他のメンバーのチップが増えている。

   ダニエラは電話を続けている。嬉しそう。くすくす笑う。

   ムラカミがそんなダニエラの表情の変化に気づく。


   ダニエルの手番、アクション考え中。


ダニエル「あ……あれ? えと……うーんうーん……」

ムラカミ「(卓の他の面々に)あのさ……あれ……」


   ダニエル除く全員、ダニエラの様子をうかがう。

   ダニエラは明るい表情で電話を続けている。


サクラ 「え、ダニエラさん何あれ」

棟梁  「お子ちゃまにゃわからんか、俺でもわかるぞ、ありゃあ恋する乙女てん

     だ」

サクラ 「わかるよ、でもさ、」

猫柳  「乙女という歳じゃないですよね」


   サクラとホワイト、猫柳を睨む。


サクラ 「身も蓋もなく言うな!」

ホワイト「恋はいくつでしてもいいのよ!」

猫柳  「す、すみません。でも僕が言うのもなんですけど、ダニエラさんってお

     いくつで……」

ジョニー「おいらジモティーだからわかるよ、同じハイスクールでおいらの2つ上

     だったよ」

猫柳  「ジョニーさんはもっとわかんないですよ!」

サクラ 「歳の話はいーからさ。相手、誰?!」

ジョニー「だからさー、おいら知ってるかもって話。ダニエラさんには当時ステデ

     ィがいたんだ。その人じゃないかなー?」

ムラカミ「おぉ、それは新情報」

ジョニー「学年違うし、おいらもガキの時分だからさ、遠くから見てただけで詳し

     くはないヨ。今考えると、立場が立場だからボディーガードだったのか

     も。それにしちゃいい雰囲気だったけどね」

ホワイト「何年前よソレ」

サクラ 「続いてたら、マジ乙女だよねー」


   ダニエラが卓に近づいてくる。ニコニコしている。


ダニエラ「ダニエル」

ダニエル「うーんうーーん……、え、なに?」

ダニエラ「彼が話したいって」


   携帯電話をダニエルに押しつける。電話からの声を聞いたとたん、ダ   

   ニエルがしゃっちょこばって直立不動。


ダニエル「りりりリッキーさん?!」


   ダニエル、電話を握りしめたまま、カクカク頷いて相づちだけ打つ。   

   しばらくして、表情凍ったまま、電話を切ってダニエラに返す。


ダニエル「ぼくおうちかえる」

ダニエラ「二度と来ないでくれる?」

ダニエル「ぜんしょします」


   ダニエル、パンツ一丁のままふらふらと退場……するところ、サクラ   

   が後ろから声をかける。


サクラ 「言い残すこと、なんかないー?」

ダニエル「(振り向く。涙目)おおお覚えてろよ! 絶対この店潰してやるからな

     ー!(退場)」

ムラカミ「ナイス捨てゼリフ」

猫柳  「ははぁこれで、ダニエルさんがこの店を潰そうとあれやこれや仕掛けて

     くるのを、我々が迎え撃つ、と、そういう構図のできあがりですね」

ジョニー「構図ってナニ? ……でもまぁ、あの人あきらめ悪そうだよねぇ」


   デイブとダニエラが交代(デイブは一礼して退場)、ダニエラはシャ   

   ッフルを始める。


ダニエラ「みなさん、お騒がせしました。ごめんなさいね、取り乱して」

サクラ 「……ダニエラさん」

ダニエラ「はい?」

サクラ 「リッキーって誰ー? ハイスクールからずっとステディってその人?」

ホワイト「洗いざらいしゃべらないと許さないわよ?」

ダニエラ「(困った顔)えっと……彼氏、とかではないですよ?」

サクラ 「またまたー」


   興味津々の目。

   ダニエラ、観念してため息。


ダニエラ「そうですねぇ……納得していただけるかわかりませんけども……。高校

     時代からのボーイフレンドなのは本当です。ダニエル避けに連れ回して

     たのもね」

サクラ 「ほうほう」

ダニエラ「でも、卒業してからは、行く道が違い過ぎて。私はこの街で生きると決

     めましたけど、彼はこの街ではとても収まらない人だったと、それだけ

     の話です。たまに連絡は取り合いますが、もう、何年も顔を合わせてま

     せん」

ホワイト「ありゃー」

ジョニー「今どこにいるんヨ?」

ダニエラ「今日は、南半球でトライアスロンですって。優勝したら賞金が出るから、

     そしたら南極にペンギンを見に行くそうです」

ムラカミ「え、優勝できんの?」

ダニエラ「できたら今頃有名人ですよ! でも『優勝する』って言って出場するん

     です。そういう人なんです」

サクラ 「あー、なんかわかるー」

ホワイト「生涯の伴侶ってのには無理ねー、でも、嫌いじゃないわそーゆーの」

猫柳  「ダニエラさん」

ダニエラ「はい?」

猫柳  「すごく嬉しそうです」

ダニエラ「ですからそういうわけでは……」


   平静は保っているものの、ダニエラの頬に朱が差している。

   と、棟梁がポツリ。


棟梁  「……で、ダニエルどうすんだ」

ダニエラ「(一瞬で素面に戻って即答)抹殺します」

サ・ホ 「せっかくいいカンジのコイバナだったのに!」



   暗転。

   パンツ一丁のダニエルが独りだけ登場。怯えつつ警戒、右を見、左を   

   見、自分の肩を抱いてぶるっと体を震わせる。


ダニエル「ふゎ、ゎ、ゎ、……ぶぇっきしょい! だ、だ、誰かが僕を、カッコい

     い僕のことを噂してるんだな」


   ダニエル、カッコつけたポーズ。でもパンツ一丁。


ダニエル「さぁ! これから、あの魔窟と化した地味で野蛮なカジノからダニエラ

     を救い出す、僕の大冒険が始まるのさ! みんな応援してくれよな!」


 ダニエル、ウィンクしながらサムズアップ。でもパンツ一丁。


ダニエル「でも僕は馬鹿じゃないぞ。スマートにやるんだ、自分の手は汚さない。

     札束で頬を叩い……ゲフンゲフン、僕の人徳に導かれて集う、頼れる仲

     間の叡智と力があれば、あーんな店、あーんな奴ら、けちょんけちょん

     のぎったぎたのほほいのほーいの、ふゎ、ゎ、ゎ、……ぶぇっきしょぉ

     ぉぉぉぉい!」


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