遥かなる星を越えて
五年後――。
「――本当にありがとうございました。月宮さんのおかげです」
「いえ、お力になれたなら光栄です。どうぞ、よき人生を」
青磁は、客を送り出した。
「ふう……」
朝から立て続けに来ていた客がようやく途切れ、つかの間、息をつく。
青磁はルーチェがいなくなった後も、占いを続けていた。今度は、運命に抗う者として。
青磁の占い処は、大繁盛であった。
そこにいけば幸せになれると、噂が噂を呼び、客がひっきりなしに訪れる。
悲しみを忘れるように、そして人々を救うために、青磁は仕事に打ち込んだ。
「明日は、久し振りに友里に会う日だったな……」
「青磁、久し振り。元気にしていた?」
「ああ、元気だよ。友里も、旦那さんと仲良くやっているか?」
「ふふ、ケンカもするけどね。でも、すごく幸せよ」
友里は二年前、結婚した。夫は、友里が療養中、リハビリをサポートしてくれた作業療法士だ。
「あなたは、相変わらず……?」
「ああ、一人身だよ」
友里には、ルーチェは故郷に帰ったとだけ告げていた。友里は何か言いたげにしていたが、事情があることを察したのか、何も言わなかった。
今も、心配そうに微笑む。
「仕事が忙しそうだけれど、無理はしないでね」
「大丈夫。できるだけたくさんの人を救いたいんだ」
部屋に帰り、椅子に深く座る。
毎日は忙しいけれど、とても充実している。
時折ひたむきで輝くようだったルーチェのことを思い出しながら、ルーチェのように人々を助けられることを目指して、青磁は日々の生活を送る。
そのとき、玄関のチャイムが鳴った。
何気なく開けて、青磁は硬直した。
そこには――。
「どうして……?」
失ったはずの、紺碧の瞳が輝いていた。
「……魔王は倒したわ。故郷は平和になった。もう、勇者は必要ないの。故郷にも大切なものはあるけれど、私は、あなたと一緒に人生を送りたい。……ここにいても、いいかしら?」
青磁はルーチェを抱きしめた。
「ああ……ずっと、一緒にいよう」
――fin.
星読み人と異界の勇者 神田未亜 @k-mia
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