世界を退屈なものと思っていた少女が、出会いを切掛けに広がりを取り戻す。

天崎朝美という少し停滞的で、退屈さを肯定できる場所で生きていた少女に訪れた『年の離れた妹・真昼』という異質な存在。

朝美は困惑しつつも真昼と向き合い、世界との繋がりとその広がり、そして己の内面をも再発見する。そしてそれは朝美自身の生き方を大きく前進させていく。

新しい環境にたくましく適応する真昼を取り巻く少女達の可愛らしい日常だけでなく、これまでもずっとそこに存在していた喧騒の中に新たに足を踏み出していく朝美の日常、その二面が並行し、交錯し、時に衝突しながらそれでも優しく日々は続いていく。

曇天の朝、灰色がかった霧の中を歩く旅人。その視界に昼の光が差し込むと、世界が青々とした空と自然の音を取り戻す、そんな情景が目に浮かぶ温かな小説でした。

その他のおすすめレビュー