自由という言葉の縄張り

 一定の金銭は一定の自由を保証する……銀河英雄伝説(田中芳樹、徳間書店、敬称略)で主人公の父親がそんなセリフを述べていた。一方、同作の主人公は、鷹と雀では視点が異なる。金持ちにとっての金貨一枚ははした金だが貧乏人には命に関わる とも述べている。
 衣食足りて礼節を知るというが、本作での主人公はただ断崖絶壁に追い詰められているだけではない。断崖絶壁を自分の子供はもちろん誰に対しても極力知られないようにしているしまた知られてもならない。 それは主人公が銭金とは絶対に代えられない人としての矜持であり存在意義だろう。
 まことに世の中は不条理であり、良識とは痛めつけられるために存在するといえよう。