こういうのが読みたかった。
こういうのが読みたかったんですよ。
国際社会の調査、緻密な描写の積み重ね、スピード感のあるアクションが一連の事件を追う2人の主人公のストーリーを骨の太い作品に仕上げていて、最後まで突き進めました。
実は作者さんは私と同世代なのですが、沢木耕太郎、船戸与一、景山民夫など海外を扱ったテーマが大流行した時期の直撃世代であり、恐らくそうした作品の影響を多分に受けているのではと感じました。それの後継、いや再来と思える懐かしさがありつつ、しかしテーマはISISとアサド政権、ロシアといった現在脚光を浴びている国際問題であるため、若い世代への「こんな事実、こんな見方、そしてこんな生き方があるんだぞ!」というメッセージにもなっています。
そしてストーリーのメインラインはハードボイルドな2人の主人公が織りなす血湧き肉躍る大活劇!
懐かしさと新しさと面白さが同居する大傑作です!とても良いものを読ませていただきました!
今この時代の国際社会を舞台に、シリア、イスラム国(IS)、テロといった難しいテーマを描き、かつエンターテインメントとしても成功している素晴らしい作品です。
作者様の他作品の登場人物たちが、メインキャラクターとして活躍しておりますが、この作品単独でも充分楽しむ事が可能となっています。
時事問題を取り扱っている現代ドラマという事で、もしかすると堅苦しく小難しい話と思いこんで敬遠してしまう人もいるかも知れませんが、それは勿体ないと言うしかない。
個性豊かなキャラクター、テンポの良いストーリー展開、緊迫感あふれるドラマ性。どれをとっても大変素晴らしく、実に見事な作品でした。
さらにこの作品の素晴らしいところは、面白いだけで終わらせないこと。
作者様の豊かな知識を惜しげもなく費やして書かれた物語は、リアリティがあるどころの話ではなく、現実そのものをしっかり描いています。
地獄のようなアレッポの悲劇、テロ組織の様子。遠い世界の話だと思いがちなそれらが、自分たちの身近に関わってくる可能性があることさえ教えてくれます。
空想世界を描く作品も実に楽しいものですが、今我々のいる現実の世界をきっちり描き、なおかつ面白さと共に確かに存在する問題を示してくれる作品と言うのは実に貴重です。
面白いだけではなく、自分の世界さえも広げてくれる。
小説とは書くあるべきだと言う、お手本のような作品でした。
素晴らしい作品を、本当にありがとうございました。
多くの人に読んでもらいたい、そんな小説です。