日本最古の鉄筋鉄骨コンクリートの建物
駅員3
大阪城天守閣
コンクリートというと、身近な建造物の素材だが、人類とコンクリートの付き合いは意外と古く、紀元前9000年まで遡る。
イスラエルで紀元前9000年の遺跡から、コンクリートを石造物の石と石のつなぎ(接着剤)として使用された跡が発掘されている。
ところがコンクリートは硬いため引張力には弱く、建築材料として用いられるようになるには、柔らかい鉄筋と組み合わせた鉄筋コンクリートが発明される19世紀まで待たなければならない。
鉄筋コンクリート(Reinforced Concrete 略して『RC』)は、1867年のフランスで植木鉢を作る職人が、たまたま針金を網状にして芯をつくりセメントで植木鉢を作ったところ、ひび割れの少ない強度のあるものが出来たことに始まるといわれている。
コンクリートは硬いため、単体では曲げや引張力に弱い。一方鉄筋は柔らかく、曲げや引張力に強い。そこで両者を合わせるとことにより、より大きな力に耐えられるようになる。
コンクリートは強アルカリ性で、コンクリートに埋め込まれた鉄筋は錆びない。さらに偶然にもコンクリートと鉄の膨張力は同じであるため、鉄筋が膨張して爆裂(ひび割れる)ことはない。コンクリートと鉄は、非常に相性のいい素材だ。
ただしコンクリートの骨材には砂が必須だが、単価の安い海砂をそのまま使うと、砂に含まれる塩分で、コンクリートの中の鉄筋は錆びて膨張し爆裂する。海砂を使う場合には、しっかり脱塩処理されたものを使わないと、後日大変なことになる。
日本では、1903年(明治36年)7月に琵琶湖疏水に架かる橋を鉄筋コンクリートで作ったものが、日本初の鉄筋コンクリート製の構造物である。
その翌年、長崎県の佐世保重工業がポンプ小屋を建築したのが、日本最初の鉄筋コンクリートの建物だ。
日本初の鉄筋コンクリートの集合住宅は、なんと長崎県は軍艦島(端島)にある7階建ての30号棟であると言われている。1916年(大正5年)に竣工した建物は、当初6階建てで計画されたものが途中から7階建てとなり、雨漏りもひどかったというが、1974年(昭和49年)に軍艦島が閉鎖されるまで、住宅として使用された。
間取りは今風に言うならば『1K』で、口の字に133戸が配置され中心部分は吹き抜けとなっていた。
鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)は地震大国日本で生まれた構法で、鉄筋コンクリートより柱や梁の断面積を小さく出来る反面、コストが高くなる。
日本初の鉄骨鉄筋コンクリートの建物は、1923年(大正12年)大阪は道頓堀に立てられた『大阪松竹座』である。イタリアのミラノにあるスカラ座をモデルに、大林組が施工した映画館であったが、残念ながら1997年(平成9年)に外観を残して劇場として建て替えられた。
現存する鉄骨鉄筋コンクリートで出来た最古の建物は、大阪城天守閣である。当時の大阪市長関一氏が音頭をとって、広く市民から寄付を募り、1931年(昭和6年)に竣工した。
2007年8月の毎日新聞に興味深い記事が掲載された。
なんと鉄骨鉄筋コンクリートで造られた大阪城天守閣は、不動産としての登記が為されていない・・・未登記物件であるという。
土地の所有は、不動産登記簿謄本によると、今でも『陸軍省』となっていることから、国有財産であることは間違えない。戦前、大阪城跡には東洋一の大阪砲兵工廠があったことから、『陸軍省』として登記され、そのまま変更されずに今日に至っているのだろう。
大阪城天守閣は大阪市の外郭団体が運営していて、建設の経緯からも大阪市の所有といっていいだろう。事実、新聞記事の中で、「大阪市に問い合わせたところ、大阪市の所有で、土地は国から借りている」と記されている。
さらに記事の中で、法務局の見解として「『不動産登記法』は民間の取引の安全を図るのが目的。市の建物は市自身が管理し、固定資産税も非課税。登記しなくても違法ではない」と書かれている。
しかし、本当だろうか?
六法全書で不動産登記法を開くと、次のような件をみつけた。
『建物を建築した場合には、1ヶ月以内に表題登記をしなければならない(不動産登記法第93条)』
建物を建築した者は、建物の所在、使用目的、規模、構造、建築年月日、原因、所有者などを登記する義務があり、怠った場合には10万円以下の科料に処せられる(不動産登記法第159条ノ2)
不動産登記法ができたのは、1899年(明治32年)に施行されたが、大阪城天守閣が建設された昭和6年には、登記しなくともよい何か根拠があったのだろうか?
日本最古の鉄筋鉄骨コンクリートの建物 駅員3 @kotarobs
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