第7話







「そんなに根の近くに行くな…!そこの土を踏むのは、木に悪いんだってば!」


「…あ」



結城が、慌てて俺に叫ぶ。

土壌を踏むのも、良くないのか。

知らなかった…さっきから、あちこち歩いていた。

俺は、沢山傷つけてしまっただろう。


それだけじゃない…。

もっと酷い事を、俺はした。

土壌を踏んだだけで、この反応。





この光景を見たら――結城は、何と言うだろうか。






「…中橋?その足元…何?」


「……え、…」


「何でそんなに枝が、落ちてるの…?」


「……っ…!」


「…ねぇ。その手に握っているのは、何?」



息が出来ない。

バレてしまった。

結城に、バレてしまった。






愛する人から、表情が消えた。






真っ黒になった瞳。

僅かに開いた口からは、何の音も聞こえない。

真っ直ぐと、俺の手元を見る。

…俺のことは、ちっとも見てくれなかった。









――あ、泣く。







そう感じた瞬間、ぽたっと落ちる涙。

大好きな彼は、声も無く泣いた。

泣かせてしまった。

初めて、泣くのを見た。


俺じゃない、愛した物の為に泣いたんだ。



「結城…」



思わず俺は、彼の名前を呼んだ。

揺れる瞳。

あ。やっと俺を、見てくれた。






「…死んでしまえよ」








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